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海はフェリーで渡る「ワンイチ」190kmコース

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東京湾をぐるりと一周
海はフェリーで渡る「ワンイチ」190kmコース

 一周サイクリングの「◯◯イチ」は全国にあり、得られる達成感から人気を博しています。地方に多いイメージですが、都心をルートに収め、東京湾をぐるりと一周できる「ワンイチ」があるのをご存知でしょうか。陸と海をどちらも楽しめる約190kmのルートを実走レポートでご紹介します。

オススメポイント 都心からもアクセスが良い東京湾が舞台。特に定まったルートがあるわけではなく、走りやすいコースで、東京湾を囲むライドができればOK。技量に応じてルートをチョイスできる選択肢が多いことが特徴。久里浜〜金谷港はフェリーで移動するため、束の間の船旅を楽しむこともできる。
レベル ★★★(上級者向け)
距離 190km
獲得標高 574m
始発・終着地 日本橋
立ち寄りスポット 横浜、三笠公園、久里浜、金谷港、幕張

東海道で横浜まで

 ワンイチはいくつものルートがあり、周り方も人それぞれですが、主に反時計回りに巡るのがメジャーです。ライドのログで東京湾をぐるりと囲っていればワンイチを完走したと言えるでしょう。

 今回は現代の道の起点となった東京・日本橋を発着点に選びました。なお、コース全体の距離は約190kmなので、どんなに早くても10時間ほどはかかります。昼から出発するライドだと、帰る頃には夜になるでしょう。基本的には1日で周り切るコースですので、早朝出発がおすすめです。今回は早朝5時のスタートでした。

 横浜までは東海道を前身とした国道15号を走ります。自転車向けの矢羽根が描かれている箇所が多く、交通量は多いですが比較的走りやすいルートといえるでしょう。多摩川を渡る際は車道での走行はできないため、一旦河川敷から橋の歩道に出る必要があります。押し歩きの区間もありますが、ここで急いでもタイムは全体であまり変化はありません。まだまだ序盤で飛ばしすぎないようにしましょう。

 川崎を抜け、15号を走り続けると新しいビルや高層マンションが見え始めれば横浜に到着です。みなとみらいのベイエリアならではの開けた景色を楽しめます。一方、そのまま直進し、山下公園方面へ向かうと本牧へと外れてしまいます。若干遠回りになるため、関内を抜けて、国道16号線に入るのがおすすめ。やや複雑なのでよくルートを確認しましょう。

 16号線ではとにかく道なりに進むだけ。途中、横須賀では戦艦三笠を展示した三笠公園そばを通ります。個性的でフォトジェニックな写真が撮れるスポットですので足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

船旅と海鮮を堪能しよう

 横須賀を抜け、国道134号線を少々進むと、中盤の山場であるフェリーに乗船する久里浜港に到着です。ここから千葉県・金谷港までは約40分間の船旅になります。ロードバイクもそのまま載せることができ、料金は自転車も含めて片道1500円。乗組員さんがしっかりと車体と固定してくれるので安心です。船内では売店もあり、お菓子や軽食も豊富。しばし脚を休めて後半に備えましょう。

 下船後、すぐに千葉の地に繰り出したい気持ちもありますが、地魚を味わってからでも遅くはありません。漁港直送の新鮮な海鮮丼を食べられる店がいくつもあります。

 金谷から竹岡、上総湊までは左手に海を眺めながら走り続けていきますが、佐貫町からは海側ルートが内陸ルートかに好みが分かれます。今回はより距離が短い後者を選択。アップダウンを繰り返し、やや足に負担がかかるルートなので無理は禁物です。木更津、袖ヶ浦を抜け、国道16号線に入ると工業地帯に突入していきます。

我慢の時間は焦らず安全に

 長浦、姉崎、市原はまさに工業団地という様相で、トラックが行き交っています。路肩のスペースは十分にありますが、時間帯によっては歩道側を徐行して走行することをお勧めします。歩道は「自転車通行可」ですし、工業地帯だけあって人はほとんど歩いていない上、道幅も十分。臨機応変に、かつ、安全第一で走行しましょう。

 千葉市に入ると、都内へ向かう国道357号線へと合流します。しかし、357号線は自転車での通行が困難なほどの交通量なので、稲毛海岸から海浜大通りを通り、幕張を抜けるのがベストなルートといえます。ZOZOマリンスタジアムや幕張メッセのそばを通るルートです。途中の美浜大橋では東京湾の大パノラマを望めるのもポイントです。

 海浜大通りを進むと南船橋で再び357号線にぶつかります。ここからは再び我慢の時。車道を走れないこともないですが、非常に走りづらい思いをしますので、歩道を徐行するのがいいでしょう。人通りは少ないものの、道幅は細く、やや入り組んでいる箇所もあるので、注意深く走行しましょう。

 走りづらい357号線をいつまでも走るのはストレスなはず。行徳あたりまで来たら内陸へと移りましょう。葛西橋通りや、新大橋通りまで出られればあとは都心へ一直線。旧江戸川、荒川、隅田川を渡ると日本橋まではあっという間のはず。「道路元標」まで戻ってきたらワンイチ完走です。

ワンイチを走ってみて

 ワンイチは東京、神奈川、千葉の1都2県を巡るコースです。〇〇イチは達成感があると冒頭で記しましたが、そのスケールは他のコースと比較しても特出した内のひとつではないでしょうか。距離が長いうえ、交通量が多いルートもあるため、技量と体力がある上級者向けではありますが、獲得標高はそれほどではないため、誰もがチャレンジしやすいコースともいえます。コンビニや休憩スポットも数多くあるので、マイペースで走り進めることも可能です。ぜひ大きな目標のひとつとして、ワンイチ完走を目指してみてはいかがでしょうか。

松尾修作(まつお・しゅうさく)

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。

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