車体だけじゃ走れない? クロスバイクを買った後に必要な安全装備ガイド松尾先輩に学ぶ 安全&快適クロスバイクライフ<1>
みなさん、はじめまして。『ENJOY SPORTS BICYCLE』編集部の田港(たみなと)です。編集部に配属となったものの、実はスポーツ用自転車はほぼ初心者…。そんな私が、このたびついにクロスバイクを手にすることになりました。新車を前に、「早く走りたい!」と思ってしまいますが、その前に揃えないといけないもの、揃えておくと安心なものがいくつかあります。本連載では、走り出す前の準備から走行中の注意点、日々のメンテナンスまで、編集部の先輩・松尾さんに教えてもらいながら学んでいきたいと思います。これからクロスバイクを始めてみたいという方はぜひ参考にしてみてください。
初回は「装備をそろえる編」。まっさらな購入したての状態から、安全に走り出すための必須アイテムを揃えていきます。

最優先で揃えるべき必須アイテム

田港
松尾さん、ついにクロスバイクを手に入れました! 軽快車と違ってライトやカゴが付いてなくて、とてもシンプルですね。

松尾先輩
そもそもスポーツ用自転車は軽快さを重視しているから、軽快車と違って最低限の装備で販売されていることがほとんどなんだ。安全に走り出すためには、本体以外にも色々揃える必要があるよ。早速お店へ買いにいってみよう。
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松尾先輩
まずはヘルメットとライトからだね。この2つは自転車に乗るためのマストアイテムだよ。

田港
なるほど。特にヘルメットは初心者にはとても重要ですね。経験が浅い分、不慣れな場面でバランスを崩す可能性も高いので、しっかり備えます!

松尾先輩
その用心は大事だね。実際にヘルメットを着用している場合といない場合では、死亡率が大きく違うというデータもあるんだ。ヘルメットの着用は「努力義務」とされているけど、事故のときに頭を守ってくれるのはヘルメットしかないから乗車時は必ず着用しよう。

田港
でも種類がとても多くて迷ってしまいます。何を基準に選んだら良いのでしょう?

松尾先輩
まずは安全基準を満たしているかどうか。日本なら「SG」、JCF(日本自転車競技連盟)公認、海外なら「CE」や「CPSC」規格のマークが目安になるよ。あとは自分の頭にフィットすることが大事。インターネットで安く売っていることがよくあるけど、店頭で試着して、しっかりフィットしつつ、きつすぎないサイズを選ぶのがポイントだよ。


田港
松尾さん、この黄色い部分は何でしょうか?


松尾先輩
いいところに気づいたね。これは「MIPS」(Multi-directional Impact Protection System:ミップス) といって、転倒などの衝撃を受けた際に頭の動きに合わせて保護レイヤーをスライドさせることで、衝撃エネルギーを吸収する仕組みなんだ。内側に低摩擦のライナーが入っていて、衝撃時にほんの少しずれることで脳への直接的なダメージを和らげてくれるんだよ。

田港
ヘルメットにそんな工夫が施されているとは…。MIPSが搭載されていると、より安心して走れそうです。これにしたいと思います!

松尾先輩
いいね!もちろん、すべてのヘルメットにMIPSが搭載されているわけじゃないし、搭載されていないモデルでも安全規格を満たしていれば問題なく使えるよ。そのうえで、MIPSのような追加機能を選べば、さらに安心感が得られるというイメージだね。用途や予算に合わせて、ショップの店員さんに相談するのがおすすめ。あと、MIPS以外にもメーカーごとに独自の衝撃吸収技術を搭載したモデルもあるんだ。

田港
ヘルメットって、実はすごく奥が深いものだったんですね!

解説:ヘルメットの重要性と選び方
警察庁の調査によると、自転車事故による死亡原因の約6割が頭部損傷。ヘルメット着用時は致死率が大きく低下します。選び方のポイントは、①安全基準マーク(SG・JCF・CE・CPSCなど)の確認②頭部へのフィット感─。特に初心者は、専門店での試着をおすすめします。
注意点として、一度落としたり事故で衝撃を受けたヘルメットは必ず交換しましょう。見た目に傷がなくても内部が破損している場合は衝撃を十分に吸収できません。また、素材の劣化もあるため、おおむね3年を目安に買い替えるのが推奨されています。

田港
松尾さん、ライトって夜だけ付ければいいのかなと思っていたのですが、昼間走る際も必要なんですか?

松尾先輩
実はライトは“夜間だけのもの”ではなくて、法律で必ず装着が義務付けられているんだ。前方を照らすフロントライトと、後方に存在を知らせるリアライト(または反射板)はセットで必須。夜やトンネルはもちろん、昼間でも曇りや雨で視界が悪いときは重要なアイテムになるよ。車から見落とされないためにも、ライトは“自分を守るための最低限の装備”なんだ。

田港
そうだったのですね。単に照らすだけではなく、存在を知らせる大切な役割もあるのか…。

松尾先輩
その通り。だからこそ、電池切れや充電忘れを防ぐために予備を持っておくとか、昼間でも点滅モードで使うといった工夫が安全につながるんだよ。

解説:ライトの役割
道路交通法では夜間の前照灯点灯は義務。日中でも曇天や雨天、トンネル内など視認性が下がる場面では点灯が効果的です。フロントライトは進行方向の視界確保、リアライトは後方からの被視認性向上に役立ちます。
あると安心&快適な装備

松尾先輩
ひとまず、これでマストアイテムは揃ったね!あとは目的に応じて、安全と快適性をアップさせるアイテムを選んでいこうか。


田港
そういえば、スポーツ用自転車って盗難に遭いやすいと聞いたのですが…

松尾先輩
残念ながらその通りだよ。スポーツ用自転車は高価だから狙われやすいんだ。クロスバイクはロードバイクと比べて安価といっても安心はできない。だから鍵は必須のアイテムになるね。

田港
盗まれないための自衛策はあるんでしょうか?

松尾先輩
まず基本は、なるべく車体から目を離さないこと。停めるときは自分の視界に入るところや、人目の多い明るい場所を選ぶのが基本だよ。

田港
たしかにそれなら常に用心できるし、盗まれにくいかも…。

松尾先輩
そのうえで、U字ロックや頑丈なチェーンロックを組み合わせて、サイクルラック等に自転車を固定するという方法もあるよ。

田港
なるほど。しっかり防犯対策を意識していきます!

松尾先輩
せっかくの愛車を盗まれるのは本当に悲しいからね。防犯は徹底しよう。


松尾先輩
あと、万が一に備えて、ちょっとした工具やパンク修理キット、予備のチューブ、携帯ポンプをサドルバッグに入れておくのもおすすめだよ。

田港
サドルの下につける収納バックがあるんですね。これなら常に携行できて、いざという時にもすぐ使えて安心です。

松尾先輩
そうだね。お店に任せることも大事だけど、パンク修理のような基本的なことは自分でできるとより安心だよ。使い方は次回解説するから楽しみにしておいて!


田港
はい!ほかに用意しておいた方がいいものはありますか?

松尾先輩
グローブはぜひおすすめしたいね。転んだときに手を守ってくれるのはもちろん、長時間ハンドルを握っていても手がしびれにくくなるし、汗で滑るのも防いでくれるんだ。

田港
なるほど。事故防止にも役立ちますね。

松尾先輩
その通り。特に初心者は不慣れて転倒のリスクがあるから、手のひらを保護してくれるパッド入りが安心だよ。
季節ごとに選ぶのも大切で、夏は通気性のいい半指タイプ、冬は防寒性のあるフルフィンガータイプを使い分けると一年中快適に走れるね。
あとは少し優先度は下がるけど、あると快適に走れるアイテムとして、例えばこんなものがあるよ。

田港
こうして見ると、サイクリングのアイテムって色々あるんですね。

松尾先輩
そうだね。全てを一度に揃える必要はないけれど、マストアイテム以外は走る距離やシーンが広がるにつれて少しずつ増やしていけばいいよ。

田港
ありがとうございます。これで安心して自転車ライフをスタートできそうです!

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ヘルメットやライト、鍵、グローブ、パンク修理キット等、今の自分に必要なアイテムが揃いました。次回は、実際に走り出す前に確認しておきたい機材の調整やクロスバイクの基本的な乗り方を紹介していきます。