ロードバイクの感覚でMTBに乗って“痛い”目に 林道で学んだ「ブレーキング」の落とし穴しくじりサイクリスト<11>
「自分は自転車に乗り慣れているから大丈夫」——その過信が、文字通り痛い目を見る原因となりました。国内最高峰といわれるMTB・グラベルイベント「セルフディスカバリーアドベンチャー in 王滝」に出場するため、念願のMTB(マウンテンバイク)を購入し、林道での走行練習を開始したときのこと。意気込みや虚しく、その初陣で待っていたのは楽しさや達成感ではなく、膝の負傷と深い後悔でした。私と同じような失敗を誰もしないよう、自戒も込めてその経験を共有します。

「ロードバイクの経験」が仇に
その日はあいにくの小雨でしたが、練習に気合が入っていたこともあり、「これくらいなら大丈夫だろう」と走り出したのが間違いの始まりでした。
私は普段、ロードバイクを楽しんでいます。MTBも車種は違えど同じスポーツ用自転車。多少の挙動の違いはあっても、これまでの経験があればすぐに乗りこなせるだろうとタカをくくっていました。
事故が起きたのは、濡れた砂利が続く下り坂です。雨も強まってきた最中、スピードを抑えようといつもの感覚でレバーを握った瞬間、前輪がロック。直後、制御を失った後輪が大きくスリップし、私はなす術もなく荒れた路面に叩きつけられました。転倒した瞬間、何が起きたのか、何を間違えていたのか、理解できませんでした。
なぜブレーキングに失敗したのか?
ロードバイクの感覚でMTBに乗って、ブレーキングに失敗した要因は主に3つあります。
一つはブレーキの「制動力」の差です。MTBのディスクブレーキは、指一本でロックするほど強力です。ロードバイクのキャリパーブレーキのような「じわり」と効かせる感覚で握ると、濡れた悪路では簡単にタイヤのグリップ限界を超えてしまいます。
二つめは「重心位置」の誤解。ロードバイクではサドルに腰を下ろしたままブレーキをかけることが多いですが、MTBの下り坂では「ヒップバック(重心を後ろに引く)」が鉄則です。重心が前のめりのままブレーキをかけたため、フロントに荷重が集中しすぎて前輪が突き刺さるような挙動(ジャックナイフ状態)を招きました。
【参考記事】⇒ 『レバー操作だけじゃない MTBの上達のカギを握るブレーキングのテクニック』
そして三つめは「路面状況」を甘くみたこと。舗装路の雨とは比較にならないほど、濡れたガレ場の摩擦係数は低く、かつ不安定です。浮き石や泥が混じる場所での急激な入力は、即座にスリップに直結します。
かくして、転倒…。体勢を立て直そうとしたとき、地面に打ち付けた自分の膝と肘を見て絶句しました。未舗装路の粗い砂利は、いうならば「天然のおろし金」。露出していた膝と肘の皮膚は擦過傷を超えて、深く傷ついていました。
これからMTBを始める方への教訓
私と同じようにロードバイクに乗っていて、これからMTBを始めたいと考えている方に伝えたいことは、シンプルですが重要です。
- 1.ロードバイクとMTBは「別の乗り物」:ロードバイクでどれだけ走っていようと、MTBのオフロード走行は全く別のスポーツです。まずは平地で、MTB特有のブレーキングや体重移動の基礎を練習しましょう。
- 2.プロテクターを着ける:ビギナーこそ膝と肘のプロテクターは必須です。私も「そこまで大袈裟な装備は…」と敬遠していましたが、あの時装着していれば、怪我はただの打ち身で済んでいたはず。後悔先に立たず、です。
- 3.天候判断をシビアに:未舗装路の雨は難易度を数倍に跳ね上げます。「せっかく来たから」という気持ちに囚われず、ときには撤退する決断も必要です。
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MTBは正しいバイクコントロールができれば、ロードバイクとはまた違った素晴らしい景色と体験を得ることができます。バイクショップのイベントやスクールで基礎的なスキルを教えてもらったり、あるいは購入前に一度レンタルをしてスクールに入ってみるのも良いでしょう。
しっかりとスキルを身に着けて、私のような痛い失敗をせずに楽しく安全なデビューを果たしてください。

アウトドアメーカー「モンベル」の広報部勤務を経て、自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、国内外を走り回る一方で、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
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