食べた分だけ消費できる! “フジイチ”グルメライド(山梨)ぐるっと一周「〇〇イチ」に挑戦!<4>

2025/12/05    

 富士山の麓をぐるっと一周する通称「フジイチ」。距離もさることながら獲得標高もしっかりある健脚向けのコースです。厳しいコースですが、コース上には消費するカロリーを美味しくしっかり補える“富士山グルメ”のスポットももりだくさん。お目当てのスポットで計画的にエネルギーを補給しながら、美味しく完走を目指すフジイチをご紹介します。

オススメポイント いわゆる“一周もの”には珍しい、しっかり獲得標高のあるコース。距離も100km超と上級者にとっては走りごたえがあり、中級者にはチャレンジングなライドですが、富士山の麓ならではのグルメや絶景ポイントがある厳しくも楽しいコースです。日帰りでも走破可能ですが、1泊して途中の観光地をゆっくり楽しむのもおすすめです。
レベル ★★★(上級者向け)
距離 110.4km
獲得標高 1,799m
出着地 JR御殿場駅富士山口
立ち寄りスポット 新橋浅間神社、玉喜亭、ほうとう不動、COW RESORT IDEBOK in 富士山高原、むめさん、白糸の滝、山崎精肉店

富士山の伏流水を汲んでライド開始!

 旅のスタート地点は、アクセス便利なJR御殿場駅富士山口。輪行で訪れるサイクリストにとっても優しい立地です。駅を出ると、そこに現れるのは雄大な富士山。これから始まるライドへの期待感を高めてくれます。準備を整えたら、まずは市街地を抜けて富士山方面へ。ゆるやかな上り坂が続きますが、ウォーミングアップには最適です。

JR御殿場駅富士山口から出発

 本格的にライドをスタートする前に、ここから数分の浅間新橋神社に到着します。

浅間新橋神社

 この神社には、富士山の伏流水として名高い湧き水「木の花(このはな)名水」があります。近所の住民と思われる方々がポリタンク等を持参して水を汲んでいるのに混ざって、給水ボトルに水を汲みましょう。天然ミネラルたっぷりの湧き水は疲れた体に染み渡り、これからのライドへの活力を与えてくれます。

境内にある湧き水「木の花名水」。給水用ボトルに入れて準備完了!

スタート直後に出現!最難関の「籠坂峠」

 準備ができたところでライド開始です。神社からゆるゆるとのぼりが始まり、6kmほど足を回したところで同コースの最初にして最難関、「籠坂峠」の上りが始まります。距離は10kmほど、平均勾配は4.0%ほどですが、最高勾配は13%を超えるポイントもあり、決して楽ではありません。

本コースの最大の難所、籠坂峠。御殿場駅から一気に700m程度上る

 このあとも二つほど大きめの上りがありますが、籠坂峠を越えれば“大ボス”はクリアしたも同然です。

 峠を下ると富士五湖の中で最も富士山に近く、最も標高が高い山中湖へと抜けます。湖畔を走る道は平坦で走りやすく、リラックスしたサイクリングが楽しめますが、人気の観光地でクルマの交通量も増えるので、その点は注意しましょう。

 山中湖には、東京五輪大会で山中湖村が自転車ロードレースのコースになったことを記念して作られたモニュメントが各所に3つあり、同コース上では2つのモニュメントを見ることができます。等身大サイズのロードバイクの像が3つ並んだモニュメントでは、多くのサイクリストが思い思いのポーズで写真撮影を行う人気スポットになっています。

山中湖にある東京五輪のモニュメントに愛車を混ぜて記念撮影。湖周辺には、ここを含めて3つのモニュメントがある

フジイチグルメその①~吉田うどん~

 籠坂峠をクリアし、カロリーを消費したところでグルメライドスタートです。

 一つ目は「吉田うどん」。山梨県富士吉田市を中心とした地域の名物で、 非常にコシが強く、噛み応えのある麺が特徴です。馬肉または豚肉やキャベツが具材として使われ、辛味の効いた「すりだね」を加えて食べるのが一般的です。

バイクラック完備の玉喜亭。サイクリストも利用しやすい

 富士吉田エリアにはたくさんの吉田うどんの店舗があるので、あらかじめターゲットを絞っていくもよし、道沿いの店舗に入るのも良いでしょう。昼営業のみの店舗も多いので、入店時間には注意しましょう。

玉喜亭の名物「肉天うどん」

フジイチグルメその②~山梨名物ほうとう~

 次は、富士山周辺で吉田うどんと肩を並べる人気グルメ「ほうとう」。平打ちの太い麺を、カボチャや根菜類、きのこなど旬の野菜と一緒に味噌仕立てで煮込んだ山梨県の名物です。県内でもとくに富士山北麓(富士五湖周辺)で広く味わうことができます。

現代アートのようなユニークな建造物がひときわ目を引く「ほうとう不動 東恋路店」

 うどんもほうとうも両方味わうなんてクルマでの旅行では無理ですが、そこが自転車ツーリングの良いところ。通算100km以上を走る場合、むしろエネルギー摂取は積極的に! しばしカロリー計算は忘れてグルメライドを楽しみましょう。

山梨の名物「ほうとう」。こちらもまた吉田うどん同様、コシが強い

 とはいえ、吉田うどんとほうとうはいずれもコシが強く食べ応えがあるので、無理せずどちらかを選ぶと良いでしょう。今回立ち寄った「ほうとう不動」ではシェアもできるので、おなかと仲間と相談しながら計画的に攻めるのも良いでしょう。

フジイチグルメその③~牧場直営のソフトクリーム~

 いよいよ本格的な富士山の懐へと進んでいきます。ここからは、富士山の雄大な裾野を縫うように走る、緩やかな上り坂が続く区間です。徐々に標高を上げていくにつれて視界が開け、まるで富士山に吸い込まれていくような感覚に包まれます。

視界に迫りくる富士山
樹海の中を走る道を抜けて…

 富士吉田市界隈でランチを食べてから25kmほど走ったところで牧草地が見え始めたら、次の目的地はもうすぐ。富士山高原に位置する3つめのグルメスポット、「COW RESORT IDEBOK(いでぼく)」で小休止です。

静岡県富士宮市にある生乳の生産から製品開発・販売までを一貫して行う牧場「COW RESORT IDEBOK」

 いでぼく牧場直営のジェラート&カフェでは、新鮮な生乳をふんだんに使った絶品ソフトクリームを堪能できます。冷たく、そして濃厚なミルクの甘さが染み渡る瞬間はまさに至福のひとときです。

搾りたてのミルクで作った新鮮かつ濃厚なソフトクリーム

 晴れた日には富士山の壮大な景色を眺めることもできるそう。富士山を間近に眺めながら味わうソフトクリームは、普段の何倍も美味しく感じられることでしょう。

フジイチグルメその④~富士宮やきそば~

 富士山高原から富士宮市街地へ向かう道はしばらく下りが続きます。富士宮に到着したら、素通りできないB級グルメが「富士宮焼きそば」。コシの強い蒸し麺、肉かす(油かす)、そしてイワシの削り粉が特徴の富士宮市の名物です。

コース上にある富士宮やきそば屋「むめさん」
目の前の鉄板で調理してくれる。富士宮焼きそばと同じ麺を使ったキャベツたっぷりのお好み焼きもおすすめ

 富士宮の焼きそばは蒸し麺で「宮麺」とも言われるそう。主に4社の麺が使われており、「むめさん」ではその中でもコシの強い「曽我麺」を使用しているそうです。

曽我麺を使用した「むめさん」の富士宮焼きそば

 ソフトクリームがデザートなら、富士宮焼きそばは“おやつ”といったところでしょうか。「ソフトクリームからダウンヒルでカロリーを消費していないけど…」という心配はご無用。これからゴールまで、またしっかり上ります。

絶景寄り道「白糸の滝」

 上りの前に、少し寄り道を。世界遺産にも登録されている「白糸の滝(しらいとのたき)」へ向かいます。

白糸の滝の周辺はカフェ等もあり、休憩にも最適

 コースから外れると、おしゃれなカフェ等が立ち並ぶ公園のようなエリアがあります。そこをさらに奥へと進むと、次第に水の音が聞こえてきます。

白糸の滝

 自転車を降りて遊歩道を歩けば、目の前には数え切れないほどの白い絹糸が流れ落ちるかのような、幻想的な光景が広がります。富士山の雪解け水が地層の隙間から湧き出し、高さ20m、幅150mにわたって流れ落ちるその姿は圧巻の一言。その名の通り、“白い糸”のように繊細でありながら力強く流れ続ける水流の音とマイナスイオンに包まれた空気は、しばしライドの疲れを忘れさせてくれます。

富士山の雪解け水が、水を通す地層である新富士火山層(上部)と水を通さない地層である古富士火山層(下部)の境から湧き出している

フジイチグルメその⑤~「山﨑精肉店」の絶品コロッケ~

 白糸の滝の清涼感でリフレッシュしたら、もう旅の終盤。御殿場駅に向けて、約20kmで640mほどを上ります。平均勾配はそれほどきつくはありませんが、長くじわじわと脚に効いてきます。ただ、これまでの摂取カロリーを考えれば、エネルギーは満タンなはずです。「カロリー消費」と念じながらゆっくりペダルを漕ぎ進めましょう。

 95km地点で上りは終わりです。これで御殿場駅までは大きな上りはなく、あとは下り基調となります。

 そんな完走を祝福するかのように、御殿場駅の手前に現れるのが「山﨑精肉店」です。揚げたてのホクホクとしたコロッケが人気の、地元からも愛される老舗です。

御殿場駅に向かう手前にある「山﨑精肉店」

 その場で食べられる揚げたてのコロッケはサイクリストにとって最高の行動食! とおすすめしたいところですが、ゴールまであと4kmほど…。“フジイチグルメ”をコンプリートするかしないかは、おなかと相談しましょう。

 富士山の雄大な自然を、味覚も含めた五感で味わい尽くす、ランやクルマでは体験できないサイクリストならではの富士山の楽しみ方。峠まじりの厳しい100km超ライドの道のりも、各所に美味しい目標があればあっという間に走り切れてしまうかもしれません。

  

写真・文:後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカー「モンベル」の広報部勤務を経て、自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、国内外を走り回る一方で、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

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