eBIKEで自転車旅 東京〜諏訪湖ツーリングレポート長距離ライドのコツと楽しみ方<7>
かつて自転車旅には、重い装備を背負って長距離を走り切る体力が求められました。しかし、電動アシスト付きスポーツバイク「eBIKE」の登場により、より気軽に楽しめるアクティビティへと進化しています。今回は【eBIKEの現代版ランドナーで自転車旅 200kmを走り切る装備を解説】に続く実走編。東京都・日本橋から長野県・諏訪湖まで、片道約200kmを往復する2泊3日の旅をレポートします。

eBIKEのメリットをおさらい
モーターとバッテリーを搭載したeBIKEは、ペダルを漕ぐ力に応じてアシストを加えるため、信号待ち後の加速やヒルクライムでも“背中を押される”ように進むことができます。より遠くまで、より楽に走ることが可能になるのです。
近年ではアシストユニットの小型化・効率化が進み、航続距離が100kmを超えるモデルも多数登場しています。
eBIKEは車重がある一方で、油圧ディスクブレーキの普及によって、軽い力で確実な制動が可能に。さらに、太いタイヤのエアボリュームによって快適性も高まり、荷物を満載しても安定したライドが楽しめます。
いざ出発! 街中でも感じるeBIKEの快適性
今回は国道20号・甲州街道をメインルートに選定。大垂水峠や笹子トンネルといった山岳ポイントもありますが、まずは都心の交通量の多いエリアを抜ける必要があります。

ストップ&ゴーが続く都心部では、車体と荷物を合わせて40kgもの重量があるeBIKEでも、モーターのアシストにより苦なく進めます。さらに、交通量が多い都心では路面の荒れも目立ちますが、38Cの太いタイヤが段差や振動を吸収してくれるおかげで安心。荒れた路面でも足を取られることなく、快適に走行できました。
バッテリーマネジメントに注意を
今回使用したeBIKEの公式スペックでは、航続距離は105km。ただしこれはあくまで平均的な使い方での目安で、登坂が続いたり、出力の高いモードで走行を続けたりすると、実際にはより早くバッテリーが消耗します。
スポーツ用自転車のeBIKEは、多くが「エコ」「ノーマル」「パワー」など複数のアシストモードを備えています。平坦路や下り坂では「エコ」や「ノーマル」、上り坂では「パワー」など、状況に応じた切り替えが必要です。筆者が使用したモデルには、ペダルを踏む力を検知して最適な出力を自動で調整する「スマートモード」があり、旅の間はこのモードを使用しました。
上りと下りで際立つeBIKEの実力
高尾を過ぎると本格的な登坂が始まりますが、モーターのアシストにより、重たい装備のeBIKEでも軽やかに前へ進んでいきます。ペダリングに余裕ができたことで、自然と目線は上がり、周囲の風景を楽しむことができました。ヒルクライム中はどうしても顔が下を向きがちですが、それでは旅の醍醐味を見逃してしまいます。
ただし、注意も必要です。左右に荷物を積んだパニアバッグを装備していると、立ち漕ぎ(ダンシング)時にバランスを崩しやすくなります。積載量によっては、常に座って漕ぐ“シッティング”の方が安全でした。

下りでは、車重があるためスピードが出やすく、制動距離も伸びがちです。ディスクブレーキはリムブレーキに比べて耐熱性が高く、ブレーキを断続的に当てながら下る「当て効き」にも強い設計です。車体や装備の特性を理解したうえで、安全に走行しましょう。
バッテリー交換で距離をカバー
出発前から、途中でのバッテリー交換は想定していましたが、想定より早い68km地点で1本目のバッテリーが切れました。バッテリーはダウンチューブ内蔵型で、使い切ったものを取り出し、満充電の2本目に換装します。なお、内蔵バッテリーが外せない車種もあるため、長距離ライドを検討している方は事前に仕様の確認が必要です。

その後、2本目のバッテリーも140km地点で消耗し、3本目へ交換。山梨県の盆地を抜け、再び山道に差し掛かるタイミングでした。今回の旅では「予備2本で十分だろう」と考えていましたが、地形や積載重量によりバッテリーの消費は大きく変わります。獲得標高の確認と余裕をもったバッテリー準備は、ロングライドでは欠かせません。
無事に完走! 実際、疲れるの?
旅の途中では、一眼レフカメラで景色を撮ったり、各地で食事を楽しんだりしながら、約11時間かけて諏訪湖に到着しました。アシスト付きとはいえ、しっかり疲れます。ただし、それは“心地よい疲れ”です。

モーターのアシストはあるものの、ペダルを漕ぐのは自分自身。カーブでのハンドリングやブレーキ操作、交通への注意など、スポーツとしての要素もしっかりと含まれています。自らの力で目的地へたどり着いたという達成感は、eBIKEでも十分に味わえるのです。

eBIKEは“大人の旅”の新たな選択肢
eBIKEを活用すれば、体力や脚力の制限にとらわれず、距離やルートに自由度が生まれます。少しのコツと準備があれば、誰でも気軽に楽しめる、大人の新しい遊びです。
のんびりと遠くまで。eBIKEを旅のお供に選んでみてはいかがでしょうか?

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。
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