2023.10.20
ロードバイクをはじめとするスポーツバイクには、シフト/ブレーキレバー、フロントディレーラー、リヤディレーラー、ブレーキキャリパー、クランク、チェーン、スプロケットといった一連のパーツが付いています。それらをまとめてコンポーネント、略して「コンポ」と言います。
コンポを作っているメーカーには、「シマノ」、「スラム」、「カンパニョーロ」などがあり、各メーカーのコンポにはグレードが存在します。分かりやすいように最もポピュラーなシマノのロードバイク用コンポで説明すると、上位グレードから「デュラエース」、「アルテグラ」、「105」、「ティアグラ」、「ソラ」という順番があります。
ではグレードの違いで何が違うのか。現在のコンポーネントには、グレードによって電動変速(電動コンポ)あるいは機械式変速(機械式コンポ)などの構造的な違いなどもありますが、まず、敢えてそれらを無視してグレード間の違いについて説明します。
大きな違いは、まず重量です。他の条件が一定であれば、スポーツバイクは軽ければ軽いほうが良い。スポーツバイクとは慣性に逆らって加速し、曲がり、止まり、重力に逆らって坂を上る乗り物です。重量が軽ければ軽いほどシャープに加速・減速し、スパッと曲がり、ピタッと止まり、スイスイと上れるようになります。だから各コンポメーカーは、軽くて強い素材(例外なく材料費が高価です)や、軽く仕上げることができる製造方法(例外なく加工費が高いです)を採用するわけです。
変速段数も違います。デュラエース、アルテグラ、105はリヤディレーラーの変速段数が12速になりました。ティアグラは10速、ソラは9速です。変速段数が多いほど、より幅広いギヤを使えるようになり、キツい坂を上れるようになったり、より速いスピードで走れるようになります。また、隣のギヤとのギャップが小さくなるので、効率よく走ることも可能になります。
そして、グレードが高ければ高いほど、サイズラインナップが豊富になります。実はコンポーネントにもサイズがあって、クランクの長さ、チェーンリングやスプロケットの歯数などです。それらはグレードが高いものの方がたくさんサイズ展開されていることが多いです。要するに、グレードが高いコンポの方が体や目的によりフィットさせやすいというわけです。高級品ならではの“おもてなし”といったところでしょうか。
操作感も違います。基本的に、グレードが上がれば上がるほど各部品を動かしたときのフリクションロスが小さくなって、動きが軽く正確になり、レバーのタッチがよくなります。
厳密に言えば、変速性能にも差が出ます。例えば、現行のシマノのデュラエースとアルテグラには、チェーンリングやスプロケットの歯先形状を工夫して変速性能を向上させる「ハイパーグライドプラス」という加工が施されています。105以下は、それが採用されていません。とはいえ、それは普通に楽しく走っているぶんには気付かないかもしれないほどの差です。
そもそも、僕がスポーツバイクに乗り始めた20年以上前は、グレード間の差は今よりもずっと大きなものでした。デュラエースとアルテグラの間には厳然たる差がありました。大げさに言えば別物。デュラエースに比べると、アルテグラの操作感は頼りなかったですし、変速もスムーズに決まらず重かった。見た目の質感も一段落ちるものでした。
しかし、今のコンポーネントにはグレードの間でそこまでの差はありません。過去に紹介した記事「15万円と100万円のロードバイクの違い」でも書いていますが、基本性能が上がったことで、グレード間の差は縮まっているのです。
さて、冒頭で少し触れた「電動コンポ」の話もしておきましょう。デュラエース、アルテグラ、105には、「Di2」(ディーアイツー)と呼ばれる電動変速が用意されています。その名の通り、フロントディレーラーとリヤディレーラーにモーターが内蔵され、シフトレバーに設けられたスイッチを押すことで信号が送られ、モーターで変速機を動かすというものです。スラムやカンパニョーロの上位グレードにも電動変速が設定されています。これに対して、金属のケーブルとバネの力でディレーラーを動かす従来の方式を「機械式変速」と呼びます。
電動変速のメリットは、まず変速操作が簡単になること。機械式変速ではシフトレバーを大きくグイッと倒してケーブルを引っ張らなければいけないところを、電動変速ではボタンをカチッと押すだけ。ちょうどパソコンのマウスをクリックするような操作感です。
スイッチの役割を自由に設定できることも大きなメリット。機械式変速では、左レバーと右レバーでシフトアップとシフトダウンの操作が逆になってしまいます。機構上仕方がないことなのですが、ビギナーは混乱してしまうでしょう。
Di2になると、シフトスイッチの役割を自由に設定できるため、「左右どちらのレバーも、前のスイッチがシフトアップ、後ろのスイッチがシフトダウン」というように、直感的に操作できる設定にすることができます。また、機械式変速ではリヤディレーラーとフロントディレーラーを別々に操作しなければいけませんでしたが、「シンクロナイズドシフト」という機能を使えば、フロントディレーラーの操作を自動で行ってくれます。
今まではロードバイクのシフト操作はコツがあり、覚えることも多く、やや難しいものでしたが(クルマのマニュアルと同様、それが「変速する楽しみ」になっていたのも事実ですが)、Di2になることで「このスイッチを押せば軽くなる、このスイッチでは重くなる」を覚えるだけでよくなります。ここは非常に大きな違いです。
デメリットは高価になってしまうことと、充電が必要になることなどですが、ロードバイクの変速操作を「より簡単に、よりストレスフリーに」という方向に進化させた電動変速の存在は非常に意義が大きいといえるでしょう。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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