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変速機の使い方とコツ

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初心者のためのスポーツ用自転車基礎講座<5>
変速機の使い方とコツ

 スポーツバイクの特徴の一つに、「変速段数が多いこと」が挙げられます。モデルによって様々ですが、ロードバイクに限れば、「フロント(前)ギアが2段、リア(後ろ)のギアが8~12段」が多いですね。要するに2×8~12で、16~24段変速というわけです。自動車やオートバイ、軽快車などに比べて圧倒的に多いです。

 これは、0~70km/hというロードバイクの速度域に対して、人間の脚の回転数の許容範囲が狭いことを意味します。人間が力を出しやすいペダル回転数の範囲が狭いので、速度の変化に合わせて細かく変速する必要があり、自ずと変速段数が多くなったというわけです。

 軽快車は3段くらいが多いですが、それは想定速度域が低く、走行距離も短いため。ロードバイクはスピードを出す乗り物であり、さらに走行距離もかなり長くなるので、できるだけ効率のいいペダル回転数を維持しておく必要があります。

 軽快車のように変速段数が少なく操作がシンプルであれば、すぐに操作に慣れることができますが、ロードバイクは変速段数が多く、変速機がフロントとリヤの2つあるので、変速レバーも2本になり、操作が少々ややこしくなります。

この記事のポイント

変速のメカニズムを理解する

 上手な変速に行うためのコツは5つあります。

 まず、ざっくりとで良いので変速のメカニズムを理解しておくこと。多くのロードバイクにはフロントディレイラーとリヤディレイラーがあり、フロントディレイラーを左レバーで、リヤディレイラーを右レバーで操作しますが、どのレバーを操作すればギヤがどれほど重く(もしくは軽く)なるのかを覚えておきましょう。少々ややこしいので、最初は「ちょっと重くしたいから、えーっと…こっちのレバーをこっちに倒して…」と考えながらになると思いますが、すぐに慣れて意識せずとも操作できるようになります。

こまめに変速する

 次に、意識的に小まめに変速すること。軽快車に慣れていると同じギヤでずっと走ってしまいがちですが、スポーツバイクの変速段数は多いので、軽快車に比べて変速回数は桁違いに多くなります。街中のようなスピードの上下が激しい状況では、もう常に変速しているほどです。

ペダルを回しながら変速

 また、変速するときはペダルを回しておくこと。軽快車によく見られる内装変速機と違い、スポーツバイクは外装変速機なので、ペダルを止めた状態で変速操作をしても変速できません。チェーンが脱線することで変速するので、変速するにはチェーンが動いていないといけません。

状況を先読みして変速

 さらに、状況を先読みしてあらかじめ変速しておく」ことも大切なポイントです。「ペダルを止めた状態では変速できない」ということは、一度止まってしまうと変速はできません。赤信号などで止まるときは、止まってしまう前に軽いギアに変えておくことが必要です(走り始めるときは軽いギヤのほうが加速しやすいからです)。

ペダリングの力を少し弱める

 もうひとつは、変速する瞬間にペダリングパワーをちょっと抜くことです。スポーツバイクの変速はチェーンを強制的に脱線させて隣のギヤにかけかえることで行われます。ディレイラー(derailleur)とは「脱線させる」(derail)ものという意味ですから、脱線している間は、当然ですがパワーは伝達されません。脱線してパワーの伝達が途切れる一瞬、ペダリングパワーを弱めてやるとスムーズに変速できます。マニュアル車を運転したことがある人なら、クラッチを切るイメージと言えば伝わりやすいかもしれません。

 たくさんポイントを挙げてしまいましたが、変速が上手くできるようになると、走る楽しさが倍増します。自動車では新車の99%がオートマ車になっており、「操る楽しみがなくなった」などと言われていますが、ロードバイクは今でも完全にマニュアルで、変速段数が多く、しかも変速機が2つもあるので、それらを駆使して疾走する楽しみはスポーツバイクならではの快感です。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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