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落車トラブルのリスクを減らす心得

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サイクリングの極意<20>
落車トラブルのリスクを減らす心得

 高速で走れるスポーツバイク…中でもロードバイクは原動機付自転車並か、それ以上のスピードが出てしまう乗り物です。その疾走感が醍醐味ではあるものの、「落車」というリスクとは常に隣り合わせ。しかも、着ているのは薄いジャージとビブ1枚のみ。冬場であってもせいぜい枚数が増えるだけで、薄着であることには変わりません。

 筆者は幸いにも、ロードバイクでの落車経験はないですが、ミニベロでキャッツアイ(道路鋲)に乗り上げて、前方に吹っ飛んだことはあります(肘と手首に大あざができました)。

 今回は「落車リスクを減らす心得」を共有してみようと思います。

落車は経験したくないもの。トラブルのリスクを減らための心得を紹介します

シチュエーション別の落車リスクと回避法

 基本、落車はいつでもどこでも起こり得るので、気は抜けませんが、リスクの高いシチュエーションをピックアップしてみました。

1. 峠の下り

 ちょっと郊外に足を伸ばしてヒルクライムをすると、当然下りが待っています。下りはスピードが出るので、シンプルに事故が起きやすいです。峠道の路面がきれいで走りやすい…のは非常に稀で、観光地のような行政の道路整備が行き届いている場所以外は「荒れている」と思っておくのが吉です。

カーブの向こうは崖かもしれない…くらいの気持ちで

 ひび割れ、穴ぼこ、隆起、などの路面の荒れだけでなく、落石や落ち葉、ときには大きめの枝がゴロンと横たわっていることもザラ。そのまま突っ込むと落車は免れません。

調子に乗って落ち葉に突っ込まないように

 路面がきれいでも油断はできません。秋冬は落ち葉も多いです。落ち葉でタイヤのグリップを失うこともありますし、落ち葉の下に大きめ目の石が隠れていたりします。

 さらに、寒い時期は路面凍結もあります。個人的にはこれが一番怖いので、12~2月はヒルクライムは封印しています。

 路面を観察しながら走り、危険を回避できる程度のスピードで下りましょう。

2. 田舎道

 田舎道も峠同様、路面状態が悪いことが多いです。地方に行くほどその傾向が強い気がします。交通量の多いバイパスとか、大型物流トラックが激しく往来する幹線道路も同様ですね。

 巨大な轍、タイヤがすっぽりハマる裂け目、落ちたらただではすまなさそうな巨大な穴ぼこ…。都心ならすぐ補修されるのでしょうが、地方は範囲が広いので手が回らないのでしょう。市区町村の土木工事予算にも左右されるかもしれません。あまりにも路面状況が悪ければ、歩道に回避することもためらわないようにしましょう。

轍はハンドルが取られそうでかなり怖い

 筆者は郊外に出かけた際は、日が落ちてからの走行は慎んでいます。夕暮れが見えてきたら最寄りの駅を探し、電車で帰ります。ロングライドでは、そのつもりがなくても輪行バッグを持参しておくと、こうしたシーンで助かります。

3. 夜の市街地

 夜間走行しないに越したことはなくても、状況がそれを許さないケースもあります。自転車通勤をしていたり、想定外のトラブルで目的地に着く前に日が暮れてしまい、電車もない…。そうした場合はどうしたらいいのでしょうか。

夜間走行時には「見る」「見られる」の2つの対策を講じています

 答えは「細心の注意を払って走るしかない」のですが、筆者は「見る」「見られる」の2つの対策を講じています。

 前者は「視界確保のために“すごく明るいライト”を点ける」です。800ルーメンのフロントライトの安心感は絶大でして、路面の異常をいち早く発見できます。照射力が高いライトは価格も高くなりますが、命を助けると思ってケチらないでおきたいところです。

 後者は「複数のリアフラッシャーを装着する」です。筆者はヘルメットとバイク本体の2箇所にリアフラッシャーを装着して、後続車両に対して自分の存在を知らせるべく、なるべく目立つようにしています。

 完全な漆黒の闇を走るときは、予備でもうひとつ持っておき、トリプルリアフラッシャーで走ることも。3つあればさすがに車から見落とされることはまずありません。ひとつの電池が切れてもまだ行ける…という意味で、保険の意味もあります。

個人的なおまじない

 筆者が実践する「おまじない」的な行為もご紹介しましょう。些細なことですが、以下で紹介する行為は、意外に予防効果が高いと信じています。

1. 時間に余裕を持つ

 急いでいたり、焦っていると注意散漫になり、無謀な走行をしてしまう…。これは車でもよくあることですよね? そうならないよう、時間に余裕を持って準備し、出かけること。時間配分はバッファーを設けておくとよいです。

2. 自分のスキルを信じない

 40歳を過ぎてからロードバイクを始めた私は、競技経験もなく、専門のトレーニングを受けたこともないので、経験者であると言っても「しょせん素人」です。

 つまり、自分のスキルを全く信用していません。実際、乗車したまま静止状態を保つスタンディングスティルも前輪を宙に浮かせて走行するウイリーもできません。ちょっとバランスを崩しただけで、いともカンタンに転倒してしまうだろうし、パニックになったらわけのわからないことをしでかす可能性も高いです。

 そんな素人に毛が生えた程度の自分なので、気持ちはチキン(弱気)です。ただし、安全運転のためにはこれくらい慎重で良いと思ってます。

3. 家族のことを頭の片隅で常に考えている

 私はいつも家族のことを頭の片隅で常に考えています。特にダウンヒルの直前に「もし、今日事故で死んだら、残された家族はどうなるか」と考えます。

落車1回で人生を棒に振るかもしれないのですから、慎重過ぎるくらい…がちょうどよいのではないでしょうか

 死なないまでも障害が残ってしまったり、仕事が満足にできない体になってしまったら? 一家の大黒柱が、そうした状態になるのは絶対に避けねばなりません。家族の顔を思い浮かべ、「自分ひとりの身体ではない」「五体満足で帰宅する」と肝に銘じて下ります。すると、自然とスピードはゆっくりになり、攻めた走りにはなりません。

中山順司
中山 順司(なかやま・じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。ブログ「サイクルガジェット」を運営。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ローディの方はもちろん、これからロードバイクを始めようかとお考えの方が、「こんなコンテンツを読みたかった!」とヒザを打って喜ぶ記事をつくります。
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