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世界遺産・熊野で海と山の絶景を堪能する「熊野100kmライド」(三重・和歌山)

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部である熊野古道が通り、七里御浜に象徴される海辺の開放的なスポットと神々しさを感じさせる山岳エリアが混在し、豊かな自然も魅力的な熊野。サイクリストにとっては「ツール・ド・熊野」の舞台としてもおなじみではないでしょうか。今回は三重県と和歌山県にまたがる熊野エリアのみどころをぎゅっと詰め込んだ100kmほどのコースを紹介します。(Text& Photo by Masanori ASANO)
熊野を代表する絶景・七里御浜。緩やかな弧を描く砂利浜が20km以上続く
オススメポイント 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部「熊野古道」、ロードレース「ツール・ド・熊野」の舞台でも有名な三重県と和歌山県にまたがる海も山も楽しめるコース。見所も走りごたえもたくさん詰め込んだ100kmです。
レベル ★★★(上級者向け)
距離 93.2km
獲得標高 1,794m
出発・終着地 道の駅 熊野・花の窟
立ち寄りグルメ お綱茶屋
立ち寄りスポット 花の窟神社、七里御浜、獅子岩、道の駅 紀宝町ウミガメ公園、熊野速玉大社、楊枝薬師堂、湯ノ口温泉、丸山千枚田

花の窟に七里御浜、獅子岩、序盤から世界遺産のオンパレード

今回の旅のスタートは「道の駅 熊野・花の窟」。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素のひとつ、花の窟神社に隣接しています。まずは花の窟神社にお参りして旅の安全を願いましょう。 花の窟神社は神々の母・伊弉冉尊(イザナミノミコト)の御陵とされ、日本書紀にも登場する日本最古の神社です。ご神体は高さ70mの巨岩で、高いところに綱が架かっています。この綱は年2回行われるお綱かけ神事(三重県無形文化財)で掛け替えられます。
花の窟神社のご神体の巨岩には綱が架かっている
花の窟神社に参拝したら、道の駅のお綱茶屋で腹ごしらえしましょう。ここでは熊野の名産・さんま寿司とこの茶屋限定の黒米を使ったみたらし団子をいただきます。黒米のみたらしは注文を受けてから焼いてくれるので、できたて熱々をいただけます。

■道の駅 熊野・花の窟

所在地:三重県熊野市有馬町137 TEL:0597-88-1011 営業時間:10時から17時(季節により変更有り) 定休日:年中無休
道の駅熊野・花の窟は、世界遺産の花の窟神社に隣接している
熊野の郷土食・さんま寿司とこの茶屋オリジナルの黒米を使ったみたらし団子
お腹が満たされたらまずは北へ向かい、熊野を代表する絶景・七里御浜と周辺の見どころを巡ります。「道の駅 熊野・花の窟」から北に2kmほど進むと、鬼ヶ城トンネルの手前で自転車は通行禁止になりますが、トンネル手前に七里御浜を望む絶景ポイントがあります。七里御浜は熊野古道の一部で浜街道と呼ばれ、世界遺産の構成要素のひとつに数えられますが、全貌を望めるポイントは少なく、このポイントはなかなか貴重です。 ここから南に1kmほど戻ると獅子岩が現れます。その名の通り、獅子が七里御浜に向けて遠吠えするような形をした奇岩で、これも世界遺産を構成するひとつです。序盤から世界遺産のオンパレードですが、このコースの魅力はこんなものではありません!
獅子が七里御浜に向かって遠吠えするように見える奇岩・獅子岩

橋を渡って県境を越え、和歌山へ

国道42号をさらに南へ進みます。獅子岩から南は防風林の切れ間から所々七里御浜が見えるぐらいですが、風の中に潮の香りが感じられ、海辺をサイクリングしていることが実感できます。
国道42号を走行中もときどき七里御浜の絶景を楽しめる
国道42号の沿道には、個性豊かな道の駅があります。今回のコースでは「道の駅 熊野・花の窟」「道の駅パーク七里御浜」「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」と3つの道の駅があります。 そのうち「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」は、このあたりがウミガメの産卵地であることにちなみ、入り口でウミガメのモニュメントが出迎えてくれます。構内にあるウミガメプールでは、アカウミガメが悠々と泳ぐのを見ることができます。
「道の駅 紀宝町ウミガメ公園」ではウミガメのモニュメントが迎えてくれる
ウミガメプールで悠々と泳ぐアカウミガメ
ウミガメが泳ぐ姿を存分に堪能したら、さらに南へ進みます。国道42号はこの先、丘に登るルートと旧道に至る側道に分かれますが、交通量の少ない側道へ。この分岐から4kmほど進むと、熊野川に架かる大小2つの橋が現れます。ひとつは古い熊野大橋、もうひとつは新しく架けられた新熊野大橋です。どちらも自転車で渡ることができ、この橋を渡ったら和歌山県に入ります。
熊野川に架かる熊野大橋。橋を渡りきったらいよいよ和歌山県だ!

熊野三山の一角・熊野速玉神社に参り、熊野川を遡る

和歌山県に入るとすぐ、熊野三山の一角・熊野速玉大社があります。和歌山県は自転車の観光への活用に積極的で、至る所にサイクルラックが設けられています。もちろん速玉神社の駐車場にもあります。ワイヤーロックで施錠し、靴を履き替えて安心してお参りしましょう。朱塗りの門を抜けると、これまた朱塗りの社殿が厳かな雰囲気で鎮まっています。世界遺産にふさわしい見事な社殿です。
熊野三山の一角・熊野速玉大社。朱塗りの社殿が森の緑と空の青に映える
境内の一角には、プレハブのように簡単に建てたり解体したりできる川原家と呼ばれる建物を利用した売店があります。お店の方によると、「このあたりは洪水が多かったから、誰でも簡単に組み立てたり解体したりできる川原家で商売する人が多かったんです」とのこと。ここでじゃばらという柑橘類を使ったドリンクと、ミカンを丸ごと使ったスムージーを購入。ドリンクで涼をとり、凍らせたスムージーは襟のところに差して溶かしながら少しずついただくことにします。
簡単に解体したり組み立てたりできる川原家を使った売店
じゃばらウォーター(左・230円)とみかんスムージー(右・300円)
熊野速玉大社をあとにし、国道42号をさらに1kmほど南下。国道168号との交差点を右折し、今度は熊野川を遡るように西進します。この先はトンネルも多く、一部のトンネルは自転車通行不可になっています。道路には自転車の走る場所を示すサインマークがあるので、それにしたがって走れば迷うことはないでしょう。 国道168号沿いには飲食店がほとんどありませんが、道の駅瀞峡街道・熊野川に「かあちゃんの店」という貴重な飲食スポットがあります。この先はほとんど飲食店がないので、エネルギー切れが不安な方はここで補給していきましょう。 道の駅からさらに西へ進むと、目の前に熊野川を渡る橋が現れるので、この橋を渡って再び三重県に入ります。対岸に渡って2kmほど西進すると、右手に楊枝薬師堂が現れます。小さなお堂ですが、かつて頭痛に悩まされていた後白河法皇のために、この地にあった柳の大木を切って京都に三十三間堂を建てたところ頭痛が治ったため、その切り株の上にお堂を建て、柳の枝で彫った薬師仏を祀ったのが起こりと伝えられています。この伝承から頭痛山平癒寺とも呼ばれます。頭痛持ちの方はお参りしてみては?
熊野川を渡って再び対岸の三重県へ
頭痛山平癒寺の異名を持つ楊枝薬師堂
楊枝薬師堂を後にし、熊野川支流の北山川沿いの梅の名所・小船梅林を通過したら、湯ノ口温泉に向けて林道の上りが待っています。平均勾配は5%弱ですが、ピークまでの距離は5kmほどあります。ピークから少し下ると湯ノ口温泉が現れます。

■湯ノ口温泉

所在地:三重県熊野市紀和町湯ノ口10 TEL:0597-97-1126 営業時間:9時~21時(日帰り入浴) 定休日:無休
湯ノ口温泉への林道は、なかなか上りがいがある!
湯ノ口温泉は、南北朝時代に鉱山開発時に発見されたという由緒ある温泉。昭和時代に一度枯渇したものの、昭和50年頃に新しい源泉が見つかったことで復活し、加温・加水なしの源泉掛け流しのお湯が楽しめる名湯として知られます。日帰り入浴も楽しめるので、ここでさっぱりするのもオススメです。
源泉掛け流しの隠れた名湯・湯ノ口温泉。湯治客も多く訪れる。日帰り入浴540円
湯ノ口温泉と1kmほど離れた場所にあるホテルを結ぶトロッコが運行されていますが、このトロッコは鉱山で実際に使われていたものです。トロッコの線路が走るのは鉱山の跡地とのこと。ちょっとした冒険気分が味わえるので、興味のある方はぜひ乗ってみてください。
湯ノ口温泉にはトロッコに乗って訪れることもできる

ツール・ド・熊野の山場、丸山千枚田を越えてフィニッシュ

湯ノ口温泉をあとにし、次は丸山千枚田を目指します。湯ノ口温泉の前の道をそのまま北上して国道311号に出るのが最短ルートですが、今回は少し戻って林道から県道780号経由で国道311号に出て、もう少し熊野の山岳エリアを楽しむルートをとります。こちらも平均勾配5%ほどの上りが約5km続き、なかなか上りがいがあります。しかし、ピークからは熊野の山並みを一望できるスポットもあり、熊野の豊かな自然を満喫できます。
山並みが幾重にも連なる山深い景色も熊野の魅力の一つ
国道に出たら、ツール・ド・熊野の第2ステージのルートにしたがって、同ステージの山場・丸山千枚田を目指します。丸山千枚田の上りは、県道780号分岐からKOM(山岳賞地点)まで約3km、平均勾配7%ほど。長くはありませんがなかなかパンチ力があります。レースの時は景色を楽しむ余裕はありませんが、ロングライドなら景色を楽しみながら走るのも、景色がいいところで写真を撮るのも自由です。 ツール・ド・熊野のKOMを過ぎ、下りに入ってまもなく、丸山千枚田を一望するポイントもあります。これは自分の脚で登り切った者だけが味わえるご褒美の絶景です。
ツール・ド・熊野出場選手の気分になって丸山千枚田の上りを走る
丸山千枚田の下りに入ってからまもなく、棚田を一望できるポイントもある
丸山千枚田の下りは、木がうっそうと茂っていて涼しいですが、道は所々苔むしていて少し滑りやすくなっています。安全第一で下りましょう。 下りきると国道311号に再び合流します。後は旅の余韻に浸りながら、下り基調の道をスタート地点の道の駅熊野・花の窟に向けてひた走るだけです。