移動の足にもスポーツにも、“余裕のある心”で楽しむ 7代目・自転車名人が語るミニベロの魅力

石井正則(いしい まさのり)さん
1973年3月21日生まれ。お笑いコンビ「アリtoキリギリス」のボケ担当として長年活動し、現在は俳優、タレントとして活躍。ミニベロを多数所有している自転車愛好家として知られ、2017年には「7代目 自転車名人」に選出されるなど、自転車の楽しさを発信している。TBSラジオの自転車エンターテインメント番組『自転車協会 presents ミラクル・サイクル・ライフ』でパーソナリティを担当。自転車のほかにも、フィルムカメラや喫茶店巡りなど多くの趣味をもつ。

—石井さんといえばミニベロ(小径自転車)乗りとして有名ですが、まずスポーツ用自転車に乗り始めたきっかけを教えてください

 最初からミニベロだったんですよね。1台目を買ったのは17、18年前くらい。移動の足が欲しいな、というのがきっかけでした。住んでいた家から駅まで少し距離があったし、どこへ行くにも乗り換えが多い駅だったんです。タクシーなら速いけれど、捕まえるまでが長い。何かいい方法はないかと、思いついたのがミニベロでした。雑誌で見ていてカッコいいなと思ったモデルがあったので、買ってみました。

 それからすぐに2台目を買いました。最初の1台は面白そうだなと思って選んだ面もあって、次は移動に使いやすくて乗り味のいいものを。なのに、カスタムした直後に、それがすぐに盗まれてしまいました。あれはつらかったですね~。でもミニベロが楽しいことはもうわかっていたので、思い切ってさらにもう一つ上のグレードのものを買いました。

 いま所有しているのは12台、全部ミニベロです。これまでにシングルギヤのバイクを2台、クロモリのロードバイクも買ったけれど、どれも一時的でした。ファーストインプレッションが強いんでしょうかね、人間って。

—ミニベロに乗って、どのような楽しみ方をされていますか

 やはり移動の足として使うのですが、まっすぐ帰るんじゃなくて、すてきな喫茶店に寄ったり、古着屋を見つけて入ったり。その楽しみ方は今も変わりません。僕が乗り始めた当時は今ほど浸透していなかったんですけど、今思えば「ポタリング」をしていた感じでした。ミニベロ自体もあまり普及していないような頃でしたね。

 フォールディング(折り畳み)バイクが中心なので旅に持って行くことや、仕事でも時間がありそうな時に持って行くことがありますね。京都での時代劇の撮影などは時間がかかるので、撮影所とホテルの移動に使って、撮影が早く終わったら喫茶店に入ったりしています。自転車を持って行くかどうか、出発する日の朝に決めることもあります。天気がよくなったら持って行ったり、先輩から「飲み行こうよ!」と声をかけられそうな場合は持って行かなかったり。「こうしなければならない」というのがなく、カジュアルに楽しんでいます。

 例えば大きな道をロードバイクでシャーっと走っていたら、小さな脇道に入ろうと思わないじゃないですか。スピードを出したいから。ミニベロでもそういうスポーツ的な楽しみ方をする時もありますけど、自分の立ち位置はそういうのとは違うところにある。ミニベロだとそこまでスピードも出ないですしね。

—速い時でどのくらいのスピードで走っているのでしょうか?

 あのですね…メーターを付けないんですよね。ブルベ(長距離を制限時間内に完走するサイクリングイベント)に出た時は必要になるので付けたんですけど、外しちゃいましたね。数字にとらわれる走り方は、自分のライフスタイル的な楽しみ方ではない。もっと景色を見たり、街を眺めたりというのが自分の中ではメイン。メーターがあると見てしまうタイプなんですかね。とらわれてしまうな、と思いました。付けてみたら「この時速をキープできてるな」とか「このくらい走ったのか」とか楽しかったんですけど、僕が求めているのとは違うタイプの楽しさだなと。

 「なんでロード乗らないの?」という話によくなるんですよ。変な例えですけどロードバイクって僕にとって、“すごく背の高い港区在住の読者モデルさん”みたいなイメージで、ミニベロは“近くにいる普通の女の子”。どちらかというと、僕は近くにいる子の方がタイプなんですよ。「なんで読モと付き合わないんだよ!?」って言われても、それはそれでいいと思うけれど、僕はこっちがいいなと。

 俳優の鶴見辰吾さんはロードバイクにバリバリで乗っていらっしゃるのに、一緒に自転車に乗るとミニベロのこともすごく褒めてくれるんです。「こういう自転車もいいですよ」って共演者にアピールしてくださる。いろんな自転車の良さをわかっている先輩が、2代目の自転車名人でいらっしゃるのは大きいですね。

—ミニベロならではの楽しみ方って、どんなものがありますか?

 脇道を探すような走り方をしています。スピードを出して幹線道路を走っていて「ここを曲がればあの店があるのに」と思うと、損した気持ちになるんです。街を見て走りたいので「よりスローに、よりスローに」というのがあるかも。自転車はだんだんスピードを求める気持ちが出てくるものだけど、もっとスローにというのを逆説的に求めている。僕は電車に乗る時、調べた通りに乗り換えられなかったらイライラしてしまうような性格なんですが、ミニベロはそうじゃない自分に変えてくれる。ゆっくり走れる、余裕のある心をミニベロが与えてくれる。

—街乗りに使うことが多いということですが、ミニベロを停める時はどんなことに気をつけていますか?

 鍵はカジュアルなものを使っていて、よく行く場所なら畳んで室内に入れさせてもらうこともあります。フォールディングバイクの時は、ハンドルを畳んで鍵をかけるだけで盗まれる確率が減ります。完璧に防ぐことはできないけど、いかに確率を下げるかだと思っています。街乗りでは、路上ではなく駐輪場に停めて鍵をかけていくことが重要なので、あらかじめ場所を調べていきます。盗難を100%は防げませんが、“心の軽さ”を求めて駐輪場を使っています。

—多くのミニベロをお持ちですが、メンテナンスはどうしていますか?

 自転車店をやっている友人がいて、そこに預けて、メンテナンスをしてもらうようにしています。自転車をいじるのは好きだし、自分でメンテナンスをすることもあるけれど、自転車は命を預けるものですし事故につながったら怖いので、あまりやりすぎないのようにしています。やりたくなっちゃうけど、あえて踏みとどまっておこうというか。

 なのでこれからスポーツ用自転車を買おうという人には、SBAA PLUS認定者のいるショップなど、なるべく信頼できるお店や「長く付き合っていきたいな」と思えるお店を見つけてくださいとお伝えしています。事故を起こしたら圧倒的に高くつきます。ばっちりメンテナンスしてもらうこと、技術を教えてもらうことも含めて、ショップにお金を払うんだという意識が大切です。

—これからスポーツ用自転車を始めようという人に、どんなアドバイスを送りたいですか?

 ミニベロから入ってもらいたいなというのが僕の意見です。値段が高いロードバイクよりも、いいミニベロを一台持っておくと違う。僕が知るロード乗りでもミニベロを持っている方が多いです。ミニベロから入ってロードバイクにも乗りたいなと思った人でも、またミニベロに乗る場面があるのでコストパフォーマンスが高いんです。特にフォールディングバイクの上質なもの、剛性があって作りがしっかりしているものがいいと思います。

 ある先輩がロードバイクを何台も買ったのですが、あまり乗らなくなった時に、車庫に置いてあると「罪悪感がある」と言っていました。ミニベロはカジュアルだから罪悪感があまりなくて、また乗る気にさせてくれると思います。何かきっかけがあった時に「じゃあ乗ろうか」と。あとは自分がロードバイクに乗って、パートナーができたらミニベロに乗ってもらったりとか。

—ラジオ番組「ミラクル・サイクル・ライフ」のパーソナリティも長く務めていますね

 自転車にまつわるすてきなゲストを迎えて、スポーツ用自転車に乗ったことのない人にも向けて番組を作っています。街全体のインフラについても、自転車の情報だけを探そうとしても見つけにくいので、そういった情報も発信していきたいと思っています。一緒にパーソナリティをしている疋田智さんと、ゲストや自転車全体のこと、他では得られないことをお伝えできたらと。リスナーの方が自転車で走っている時に頭に浮かぶ音楽を紹介する「自転車脳内BGM」のようなコーナーもあります。「ゴリゴリのロード乗りなのにこんな曲なの!?」といった発見が人それぞれにあるので、そういう企画も楽しんでもらえたらと思います。

—最後に自転車名人として、スポーツ用自転車を楽しんでいる人たちにメッセージをお願いします

 純粋に「もっともっと楽しんでください!」ということです。楽しくてしょうがないな、という思いは周りに伝染していくと思います。乗った方がいいよ、と口でアピールするよりも、楽しさがあふれ出ているのを見ると、やってみようかなという人が増える気がするので、すごくピュアに自転車を楽しんでほしいです。

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