「やってみたい」と思ったときがチャンス! 世界を変える、広げるマウンテンバイク

小林可奈子(こばやし かなこ)さん
1970年5月24日生まれ。学生時代にMTBの魅力に目覚め、卒業後いったん就職するがプロライダーの夢を目指すべく入社一年目で退職。単身で長野県松本市に移り住み、“MTB修行”を開始。1994年の全日本でクロスカントリー(XC)とダウンヒルの2種目で優勝。1996年にアトランタ五輪に代表として出場し23位。同年のアジア選手権で優勝を果たす。1997年にワールドカップ第2戦でXC日本人最上位となる10位に。育児のために選手活動を一旦休止するも、2009年から活動を再開し、2017年には全日本選手権で18年ぶり3度目となる日本一の座に返り咲いた。選手として活動する傍ら「MTBクラブ安曇野」を主宰。

—小林さんがマウンテンバイク(MTB)を始めたきっかけを教えてください

 私がMTBを始めたのは19歳のとき。大学に入学した直後に、友人が乗っていたMTBを見たのがきっかけでした。当時は自転車といったら、いわゆる“ママチャリ”しか知りませんから、初めて見たMTBに衝撃を受けました。

 すぐに乗り始め、その年のゴールデンウィークに友人と北海道をツーリングしたんです。毎日50~60kmの距離を1週間くらいかけて走りました。そこで雪解けのにおいを感じたり、エゾリスやキタキツネを間近に見たり、クルマと違う自転車のスピードだからこそ感じられる世界に魅了されました。きっと性に合っていたんでしょうね。夏休みも行こうということになり、今度はテントを積んでツーリングに行きました。さらにMTBの世界を知りたくなって、クロスカントリーやダウンヒル、トライアルといった競技にもトライするようになりました。周囲からも「筋が良い」といわれ、どんどんのめりこんでいくうちに、MTBとアウトドアは私にとってのライフワークとなっていきました。

—趣味から一転、MTBライダーを目指そうと思ったのは?

 大学を卒業して就職したものの、何かモヤモヤしたものを抱えていました。「私の人生はこれで良いのか」って。そんなとき、当時読んでいた自転車雑誌の記事で、女性MTBライダーの五輪出場の記事を目にしたんです。それを読んだとき、「私の求めているものはこれだ!」って直感的に思ったんです。そう思ったらいても立ってもいられなくなって「私、五輪選手を目指します」といって会社に退職願を出したんです(笑)。MTBのトレーニングをするなら信州に行かなくてはと思い、とくに当てがあるわけでもありませんでしたが、松本市への移住を決め、両親にも事後説得しました。いま思うと、自分でもなかなかの行動力だと思いますが、それほど強く突き動かされたんでしょうね。それが23歳の頃でした。

—その3年後、26歳のときに目標だった五輪(アトランタ)出場を果たしましたが、当時の思いは?

 出場できたことの嬉しさというよりも、世界とのあまりの違いにショックを受けました。何もできなかった。結果は23位。「自分には積み上げてきたものが何もない」と愕然としました。それまでの「世界に行きたい」という思いから、「世界で勝ちたい」という思いに大きく変わりました。同時に国を代表する「ナショナリズム」という自覚も芽生えました。アスリートとして一流にならなければならないと強く感じ、そこから経験を積むために世界を転戦し始めました。

—しばらく第一線を退いていましたが、昨年18年ぶりに3度目の全日本で優勝の座を手にしました。現役選手を続ける理由は?

 日本代表として五輪を経験し、結婚をし、そして出産をしましたが、人生のどんなときにもMTBがありました。レースから離れて子育てをしながら考えていたことは、「私がおばあちゃんになったときに、この子や、またその子供たちがMTBを楽しめる環境にあるだろうか?」ということでした。親子3世代でMTBライドをする、というのが私の最終目標ですから。

 そこで私はまず、子供の仲間と自転車で遊ぶ機会を作り、それが主宰する「MTBクラブ安曇野」となったわけですが、子供たちと大人たちが一緒に遊び、学べる場所にしました。いつの間にか子供たちは成長し、年下の子供たちのお世話をしてくれるようになり、レーサーとなって私の練習パートナーになってくれた高校生たちもいます。

 そこには私を見て、私のようになりたい、といってくれる子供たちがいます。私はそんな子供たちに背中を押され、レースに出る決意を固めました。そして私の活動を長く支援してくださるスポンサーを初め、多くの方のご支援をいただき、私は勇気をいただいて走ることができています。MTBで走れること、レースのスタートに立てる幸せ、48歳になろうとしている今だからこそ、強く熱く感じることができるのだと思います。心から、皆さんと一緒に走っていたい、そう思えるのです。

—長女の小林あか里さんが2016年、2017年と全日本のユースで優勝を果たしましたね。親子2代で全日本チャンピオンになった感想は?

 2016年、長女の全日本チャンピオンの表彰を、表彰台の反対側で見ていたとき、実に不思議な感情が生まれました。よく頑張ったね、おめでとう!という母親の気持ち。もう一方で、自分が取れなかった、「何を!」というライバル的な悔しい気持ち。ああ、私も親としてまだまだだな、と笑えました(笑)。そして娘には言いませんでしたが、来年こそは、絶対同じ台から笑う!と決めていました。実際、取ってみるとまた違った気持ちになりましたが(笑)。

—20代、30代、40代と、自身のトレーニングの仕方は変わりましたか?

 20代の頃は、強い選手の真似をしようとしていました。「トレーニングは?レース前は?食べ物は?」と、無理をしていたように思います。自分の体を知らず真似だけをしても、自分のものにはなりません。30代は子供を産み、育てていた最中でしたので、がむしゃら、というよりも家族と一緒に楽しみたいという思いが強かった。そんな中で、アドベンチャーレースに誘っていただいたり、フルマラソンにチャレンジしたりしていました。いろんな事に挑戦して、いろんな方と出会って刺激を受けたのもこの頃です。40代になって、また笑われてしまいそうですが、成長する娘のそばで「勝ちたい」と思えるようになりました。でも若い頃とは違う身体の反応があって、根本的に身体の動きから学び直す必要がありました。

—小林さんが考えるMTBの楽しさとは?

 なんと言っても、自然の中で楽しめる、と言うことでしょうか。私の住む安曇野は四季がはっきりしていますが、走るフィールド(トレイル)も365日、同じものはありません。花や木でそれを感じることもあれば、雪解けの匂いや、ナッツの香ばしい薫りのような秋の匂い、森の動物たちや虫や鳥の鳴き声で、季節を感じることもあります。車で走り去ってしまうと気付かない日々の移り変わりが、そこにはあります。

 そしてMTBはトレイルを走るための技術(スキル)が必要です。そのスキルを磨きさえすれば例えば8歳の子供だって、磨いていない40歳の父親と一緒に(時として子供に置いていかれる大人も!)トレイルとその空気をシェアできたりもします! 老若男女が一緒に楽しめる、こんな楽しいスポーツはそうそうないと思います。

—自身のMTBのメンテナンスはどのようにしてますか?

 MTBは基本、オフロード(土の上)を走ります。ですので、乗った後の洗車は必須です。洗車をすると、様々なことが分かります。機械ですから、調子が悪くなるのには原因があります。そのための最初の気付きが洗車です。専用の洗剤とブラシできれいにしたら、オイルを注油。後は乗る前にタイヤの空気圧とサスペンションの設定をします。私がするのは、これくらいです。女性がする毎日の洗顔、保湿くらい(笑)。あとは信頼のおけるメカニックに任せます。

 今のスポーツバイクは精密です。信頼のおけるメカニックに、自分のスタイルを把握していただければ、その癖を理解し、より良いセッティングの方法もしていただけます。

—MTBは、女性には難しい乗り物・競技ですか?

 女性の天敵である、虫や草、泥んこが避けられませんから(笑)、そういう意味では難しいといえます。一方で、誰の目も気にせず、自然と一体になって自分を解放し、非日常の中で自分らしさを見つけられるという点では女性向きな乗り物であるとも思います。サスペンションや太いタイヤは身体への負担が軽減され、スタイリッシュなデザインや、アウトドアに通じるウエアも魅力の1つだと思います。レースも一般的に忍耐力が男性より優れている女性には向いていると思います!

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