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ロードバイクのフレーム素材の特徴と違い

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ロードバイク関連商品グッズ特集~種類と選び方~<3>
ロードバイクのフレーム素材の特徴と違い

 ロードバイクのフレーム素材には、カーボン、アルミ、スチール、チタンの4種類があります。それらの特徴と違いを語るには、1つの素材につき1冊の本が書けるほどの文量になってしまいますが、それぞれの特徴をできるだけ簡潔にまとめてみました。

同じロードバイク、フレーム素材の違いでどう違う?
この記事の内容

しなやかで疲れにくい「スチール」

 まずは歴史あるスチールからです。スチール=鉄のことで、ざっくり言うと「硬くて強くて重い」という素材。自転車業界的には「スチールフレームはしなやかな乗り味が特徴」といわれますが、素材としての特性はその逆です。

スチールフレーム

 なぜ「逆」かというと、鉄は重い素材なので、軽量化する必要がありますが、強度が高いので「薄く細いチューブ」にすることができる。これがスチールフレームが細身である理由です。いくら硬くて強い鉄とはいえ、チューブを薄く細くするとたわみやすくなります。そのためスチールフレームは「快適でしなやかな乗り味で、長距離を走っても疲れにくい」という特徴になりやすいのです。

 また、乗り手の体型に合わせてオーダーできること、細身でクラシカルな見た目もスチールのメリットです。ちなみに、自転車業界ではスチールフレームのことを「クロモリフレーム」と表現する人がいますが、厳密に言えばこれは誤りです。「クロモリ」とは、強度を向上させるために「クロム」と「モリブデン」を添加した特殊なスチールのことで、数多ある鉄素材の中の一種に過ぎません。さらに言えば、ステンレスもスチールの一種。添加剤をたくさん入れて錆びにくくしたスチールです。そのためステンレスフレームはスチールフレームと特徴が似ています。

高剛性でキビキビとした走りの「アルミ」

 次はアルミです。2000年代前後にロードフレームの主流となった素材で、現在もエントリーグレードに使われています。自転車業界では「アルミフレーム=硬い」というイメージが定着していますが、素材特性としては、アルミはいわゆる「軽くて弱くて柔らかい」素材(アルミ缶のペコペコ感を思い出してください)。スチールとは真逆です。壊れやすく変形しやすいため、チューブを分厚く、かつ径を太くする必要があり、その結果「硬いフレーム」になります。剛性の高さゆえのキビキビとした走りが特徴で、それが比較的安価に手に入る。これがアルミの美点と言えます。

アルミフレーム

 スチールもアルミも、素材の弱点を補おうとした結果、フレームとしては素材本来の持つ特性の逆になってしまったというわけです。ここが自転車の面白いところですね。

剛性と快適性を両立する「カーボン」

 さて、そんなアルミに代わって現在主流になっているのがカーボンです。カーボンフレームは、炭素繊維で出来た布に樹脂を染み込ませて金型に入れ、熱と圧力をかけて硬めます。先述のスチール、アルミなどに比べて圧倒的に「軽くて強くて硬い」ことが特徴です。

カーボンフレーム

 また、金属のような均一素材とは異なり、繊維の方向や厚みを場所によって変えることで、剛性のコントロールが自由自在にできることが特徴で、ペダリングの力をしっかりと受け止められる剛性と、よくしなって路面からの振動を吸収する快適性を両立させることが可能です。

 形の自由度も高く、軽く高性能にできるカーボンは自転車にもってこいの素材。今のところ最も高性能にできる素材ですが、その分高度な設計技術および製造技術が必要とされ、おのずと高価になってしまいます。

優しくも力強い走りの「チタン」

 最後はチタンです。鈍く、しかしどこか温かみのある独特の輝きを持つ素材です。通常、金属は強度(壊れにくさ)が高いと剛性(変形しにくさ)も高くなる傾向にありますが(スチールはどちらも高い、アルミはどちらも低い)、チタンは高強度なのに剛性が低いのです。強さとしなやかさを兼ね備えた素材で、しかもそこそこ軽量です。ゆえに大雑把に言えば「軽く、強く、しなやか」なのです。

チタンフレーム

 チタンは強くて軽いので、チューブをスチールのように薄く、なおかつアルミのように太くすることができ、結果的にスチールより軽く仕上げることが可能です。そんな特性によって、チタンフレームはペダリング時によくしなり、かつしなったあとの戻りが早くできるため、弾力のある独特のペダリングフィールになりやすいのです。また、ステンレス以上に腐食に強いため、スチールのように錆びの心配も必要ありません。

 アルミ、スチール、カーボン。自転車の素材として見たときに、どれも非常に特徴があり、個性的です。しかしチタンは尖った特徴がありません。「中途半端」とも言えますが、言い方を変えると「いい塩梅」とも言えます。そのせいか、「チタンの時代」はありませんでした。90年代後半まではずっとスチールの時代。90年代交換から2000年代前半まではアルミがロードレースシーンを席巻しました。そして現在はカーボン全盛です。チタンが主流になったことは一度もないのです。

 しかし、チタンフレームの「優しくも力強い走り」に魅了されるサイクリストは少なからず存在し、いつの時代も一定の支持を得ています。少数ですが強烈なファンがいる。酸いも甘いも噛み分けたベテランが最後にたどり着く、そんな不思議な魅力を備えた素材なのです。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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