TOP HOW TO プロショップ直伝 MTBの選び方・始め方<2>こだわり派に捧ぐ、一歩踏み込んだMTBの選び方

How to ride and enjoy プロショップ直伝 MTBの選び方・始め方

<2>こだわり派に捧ぐ、一歩踏み込んだMTBの選び方

 前回はオールラウンドに楽しめるトレイル系バイクを紹介しましたが、例えばダウンヒルバイクのような用途に特化したMTBに興味を持たれる方も多々いらっしゃると思います。そこで今回は、クロスカントリー系バイク(XC)、ダウンヒルバイク(DH)、エンデューロ系バイク(エンデューロ)を、それぞれが活躍するレース内容の説明も含め、バイクの特徴とトレンドを簡単にご紹介していきたいと思います。

カーボン製のハイグレードエンデューロバイク。写真はKONAのPROCESS 153 CR/DL 27.5。昨今のエンデューロバイクはトレイルバイク並みの登坂性能も備え、人気が高まっている Photo: Akihiro KOBAYASHI

クロスカントリー系バイク(XC)の特徴

 クロスカントリー(XC)レースは、アップダウンがある未舗装の周回コースを定められた距離を走行し着順を競います。クロスカントリーオリンピック(XCO)というカテゴリーとして、オリンピックの公式競技にもなっています。

 XCバイクは非常に軽量に作られ、登坂性能や加速性能、俊敏なラインコントロール性能に優れています。ホイールは29インチが主流でサスペンショントラベルは100~120mm程度、車重は10kg台前半と軽く、激しい下りが多いワールドカップなどのコースに対応するため、フルサスペンションのXCバイクも多用されています。

XCエントリー用ハードテイルバイク。写真はNESTOのTRAIZE PRO Framesetを組み上げたもの。エンデューロやDHよりも、上り下りをバランスよくこなせるように設計されているのが特徴 Photo: Masahiro OSAWA
XCバイクのリアフレームは比較的細めに作られ、駆動系のギア比はワイドレンジになっている Photo: Masahiro OSAWA
XCバイクのサストラベルは100〜120mm Photo: Masahiro OSAWA

ダウンヒルバイク(DH)の特徴

 XCバイクと対局をなすDHバイクは、スキー場などに作られた専用のコースでテクニックを駆使しスピードを競うタイムレースを目的に作られたバイク。屈強なフレームに特徴的なダブルクラウンフォークと前後に強力なディスクブレーキを備え、前後のサスペンショントラベルは200mm以上と、下りに徹したデザインになっています。

 以前は20kg以上あったDHバイクもフレーム素材やパーツの進化により現在では2〜3kgほど軽量化され、27.5インチに加え29インチホイールのDHバイクも使用されるようになってきました。

屈強なデザインのDHバイク。写真はKONAの「OPERATOR CR」。DHバイクは下りを重視したバイクでその分、登坂能力はほとんど考慮されていない Photo: Akihiro KOBAYASHI
DHバイクのリアショックはコイルスプリングタイプが多い Photo: Akihiro KOBAYASHI
200mm以上のサストラベルをもつダブルクラウンフォーク Photo: Akihiro KOBAYASHI

エンデューロバイクの特徴

 そして、ここ数年人気が高まっているカテゴリーのバイクがエンデューロレース用として開発されたエンデューロバイクです。MTBのエンデューロレースは、欧米を中心に数年前から大きな盛り上がりを見せており、国内でも徐々に人気が上昇しています。

 エンデューロレースは、ダウンヒルをメインとする数本のスペシャルステージ(タイムトライアル区間)と次のスペシャルステージのスタートまでのリエゾン(移動区間)で構成され、スペシャルステージの合計タイムで勝敗が決まりますが、リエゾンは上りが多く、この区間タイムが遅すぎるとペナルティータイムが発生するという、車のラリーにもよく似たレースでもあります。

 エンデューロバイクは過酷な下りを走破するダウンヒル性能と、次のスペシャルステージへ上るための登坂性能が必要とされるため、前後150〜170mmのサスペンションストロークとワイドレシオの駆動システムを備え、トレイルバイク並みの登坂性能も兼ね備えています。

 バイクの車重は15kg前後、27.5インチバイクが主流ですが、27.5+も兼用できる29インチバイクの人気も上昇中、DHコースやトレイルも遊べる守備範囲の広さが、エンデューロバイクの人気のポイントとなっています。

昨今のエンデューロバイクはトレイルアイク並みの登坂性能も備え、人気が高まっている。写真はメリダのONE SISTY 4000 Photo: Masahiro OSAWA
急な登坂路にも対応するエンデューロバイクの駆動部。ローギアとトップギアまでのギアの歯数差が大きく様々な勾配に対応できるワイドレシオなのが特徴 Photo: Masahiro OSAWA
リアショックはコイル式と空気を利用したエアショック式の2種あるが、エンデューロバイクのリアショックはエアスプリングタイプが主流 Photo: Masahiro OSAWA

結局どう選ぶべきか

 進化し続けてきたMTBは、その進化に応じトレンドも変化しています。

 以前はXC系、オールマウンテン系(現在のエンデューロ)、DH系という人気の並びが、現在ではXCとオールマウンテンの中間となるトレイル系が台頭し、トレイル系とエンデューロ系バイクが、その人気を2分しています。

 無難にオールラウンドに遊びたいならトレイル系、主に下りを楽しみたいならエンデューロ系のバイクを選んでおけば間違いないと思います。

バイクサイズの選び方

 最後に、自分の身体に適正なバイクサイズをどう選べば良いのかをアドバイスします。

 各メーカーのウェブサイトをチェックすると、ライダー身長によるサイズ選びのフィッティングチャートが見つかると思います。

KONAフィッティングチャート(図表は再作成したもの)

 フィッティングチャートの参考例をもとに自分に合ったバイクサイズを選んでみましょう(メーカーによって、カテゴリー別にサイズを分けている場合もあります)。例えば、身長が170cmであれば、サイズチャートからバイクサイズはMサイズが適正サイズということがわかります。

 もし、身長が168cmもしくは177cmというサイズチャートの中間にある場合は、大きめのサイズを選ばれることをお薦めします。MTBはホイールのラージ化によりジオメトリー(フレーム各部分の長さや角度)も進化し、バイクコントロールの方法も変わりました。

 自分の身長に対して適正、もしくはやや大きめのフレームサイズを選んでおけば、バイクの性能を生かしやすくなります。ただし、身長に比較して手足が長い人や逆の方もいらっしゃるので、間違いのないバイクサイズ選びは、プロショップにアドバイスしてもらうことをお薦めします。

取材協力:アキコーポレーション、ホダカ、ミヤタサイクル

小林秋弘(こばやし・あきひろ)
東京・池袋から程近い、マウンテンバイク・プロショップ「M.D.S」店長。トレイルからレース用MTBまで幅広い品揃えで、ビギナーからベテランライダーをサポート。組み立て、販売だけでなく、ツアーやスクールなどのイベントも企画、運営。自転車協会が定めるスポーツ用自転車の点検・整備のプロ「SBAA PLUS」認定者の資格も持つ。