TOPインタビュートライアスロン世界選出場を目指す団長安田さん 経験から編み出した強くなる練習の“秘訣”

Interview インタビュー

トライアスロン世界選出場を目指す団長安田さん 
経験から編み出した強くなる練習の“秘訣”

コロナ禍で久しぶりに思い出した自転車の楽しさ

─トライアスロン世界選手権出場に向けて頑張られているなか、昨シーズン(2019年)はケガをされたりと大変なシーズンだったようですね。

 練習中に落車して、肋骨にひびが入っちゃったんです。普通に生活してる程度なら大して支障はないんですけど、我慢して練習をしているとあちこちに影響が出てくるんですよね。仕事でもバラエティー番組とかで走ることがあるので、痛み止めを飲んだりして踏ん張ってましたけど、だんだん腰や脚が痛くなってきて。無意識のうちに体がかばってるんでしょうね。調子を落としていったのはそこからでした。

─そして、今シーズンは新型コロナ一色。トライアスロンも軒並み中止に追い込まれましたね。

 ほんまに、肌が白いまま夏を超えたのは初めてでした(笑)。

─十分黒い気もしますが…(笑)、今年の前半はほぼインドアトレーニングだったのですか?

 ほぼそうでしたね。目標となるレースがなくても淡々と続けられる人と、なかったらサボる人と、大きく2つに分かれますよね。で、僕はけっこうさぼっちゃう方(笑)。レースが本格的にないとわかってからどんどんさぼっちゃって、「あぁ、今年もう無理や…」と思った瞬間に、練習する気持ちが一瞬なくなってしまいました。

 でも一方で、少し休んだことで久しぶりに自転車と楽しく向き合えている自分もいました。「(パワーを)何ワット出す」とか「何km走った」とか「何人抜いた」とか、これまで数字ばっかり追っていたんですけど、サイコンもつけずにただふらーっと河川敷とか走ってみたら、すごく気持ちよくて、単純に自転車を楽しんでいた頃の気持ちを思い出しました。自分で風切って走って、汗だくになって、水飲んで、気持ちいい!っていう感覚。「NESTO、超走るやん!」みたいな(笑)。

提供:松竹芸能

 レースがなくなってさみしい気持ちもあったけれど、トライアスロンを始めてからまったくレースがないシーズンも初めてだったので、ちょっと一息つけた感じでした。自分にとっては、まずケガをしっかり治して、万全な体で再びトライアスロンを楽しめるようにする良い機会だったようにも思います。

 ただ、少し休憩するのは肉体的にも精神的にも新鮮でよかったんですけど、レースに出たい気持ちは日に日に強まっていきましたね。おなかペコペコで目の前にごはんがあるみたいな状態(笑)。普段でも食べたいけど、より‟空腹感”は強くなっていきました。改めて自分はレースが好きなんだってことにも気づきました。

─そういう意味では、コロナ禍は自転車の魅力再発見のきっかけに?

 色々再発見ですよ。例えばバーチャルライドアプリの「ズイフト」。これまでこんなに一生懸命やったことなかったけれど、ズイフトってめちゃくちゃ楽しいですよね。コロナ禍で外出自粛要請が出ていた当時、YouTubeの「チャンネル団長安田」でも配信したんですが、毎日10kmずつ100日走って、100日目は163km走るという個人的な挑戦をしました。毎日10kmを続けて100日走ったのでギネスとれると思ったら、初日が10kmに達してなくて(笑)、101日目で達成しました。でもギネスの申請に50万円かかると知って、あっさりあきらめましたけどね(笑)。

「コツコツが勝つコツ」

─逆にこれまでトレーニングをやめたいと思ったことはありますか?

 それがないんですよ。辛いとかしんどいと思ったことはたくさんあるんですけど、それでやめたいと思ったことはないですね。世界選手権にこんなに行けてないのに、どんなに真剣にやっても最高で国内8位しかとれたことがないのに、世界選に行けないと微塵も感じたことがない。これが自分でも不思議なんですよね。

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 これだけ行けなかったら、普通無理やろって思ってる人もいると思います。それが本人は絶対どこかで勝てると思ってる。逆に「なんでこんなにかかってるんやろ」って思うこともあります。なんでこんなに自分の能力が上がらないんだろうって。でも続けていれば、どこかでできると思ってる。まあ、根拠のない自信ですけどね(笑)。でもそう思うんです。

─なぜ、それほどまでに世界選手権への思いが強いのですか?

 それ、俺も真剣に考えてみたんですけど、単純に、ただ行きたいだけなんです。世界選手権てどんなところなんだろうという、単純な気持ちだけで続けられているんだと思います。細かく考えると、この歳で打ち込めるものがあることをありがたく思ったりもするんですけど、突き詰めると単純に「行きたい」という気持ちに行き着きます。

 子供が遊園地行きたいっていうのと一緒で、例えば「仮面ライダーショー」に行きたい子供に、なんで行きたいか聞いても「仮面ライダーがかっこいいから」としかいえないでしょ。そういう感じで、とにかく世界選は自分にとっては憧れとしかいえない。俺自身、なんでそんなに憧れるのか理由が知りたいくらいです(笑)。

─そもそも世界選手権を目指すきっかけとなった出来事は?

 2015年にあった、トライアスロンのレース中での落車事故です。事故後、トライアスロンにマイナスのイメージを与えてしまったんじゃないかと思っていたところに、元アジアチャンピオンの山本淳一さんから「世界選手権でも行けば明るいニュースになりません?」といわれたのがきっかけです。「行けるっしょ。まー練習しないとだめですけどねー」くらいの軽いノリで(笑)。たぶん山本さんも、当時はこんなに厳しい挑戦になるとは思ってなかったでしょうね。

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 でもね、まだまだ自分のポテンシャルはあると思います。というのも最近、練習の方法を変えたんです。「ここで止めとかないとあかん」という、さじ加減がわかってきたんですよ。若い頃はよく「限界突破」とかいって、辛くてももう一歩、もう一歩って常に追い込んでいました。しかも休日にドカンと練習するから一気に疲れ切って、疲れがとれないまま次の練習をしたりしてました。

 いまはそういう練習はもうやめて、「コツコツが勝つコツ」という言葉を大事にして練習しています。早口言葉みたいですけど(笑)、ええ言葉やなと思って。今度僕のオリジナルジャージが出るんですけど、そこにも片仮名で「コツコツガカツコツ」と書いてあります。

 一回ドカンと練習することなんて1日あればできますけど、コツコツ続けるて本当に地道なこと。1日100km走ることより、1日10kmを10日間走って地道にちょっとずつ上げていくことの方が体力のベースが作れるし、結果にもつながっていくと思います。

提供:松竹芸能

─日々の回復も大事にしながら、ですね。

 まさにそれなんです。翌日にフレッシュに練習できることが大事。次の日に身体があちこち痛くなったり、疲労が残ったままやっても楽しくもない。毎回疲れる一歩手前でやめていたら強くはならないと思うので、ときには追い込むときも必要だとは思うんですけど、基本は疲れ切るちょっと手前でやめる。その辺が練習を経て得た最近の変化だと思います。

 いままでだったらランの練習で2kmで脚痛くなって途中でやめるなんてことはなかった。痛くても「4分半/kmで何kmまで走るぞ」って思って続けてきたけれど、それじゃだめ。痛くなった瞬間に止める。ケガを重ねてきたからこそ、実感として言えることだし、ずっとエリートで第一線でやってきた選手にはわからない、一般人として始めたからこそ得た頑張り方の“さじ加減”だと思うので、そこは経験者として伝えられればと思っています。

─世界選手権の出場に向けて「あと何年後」といったプランはあるんですか?

 いやもう、毎年「今年こそ」といってます。何年後に行くぞじゃなく、コロナが収束して、行けるなら来年には出場権を獲得しにいきます。来年がなければ再来年。出場権をとるまでやります。毎年4月、5月からシーズンが始まるんですけど、大会が開かれるならすぐにでも出場したいですね。なのでしっかりケガを治して、体力を維持して、来年のシーズンに戦えるようにしっかり準備しておきたいと思います。

─世界選手権の出場を果たしたら団長はどうなるのでしょうか?

 どうなるんでしょうね~(笑)。目標がない自分も想像できないので、次の目標をたてて目指すのかな。目標がなかったら何もしない人になるような気がするんです。だからやってる気もする。ずっと家にいろって言われたらできるんじゃないかな。そんな自分がこわいです(笑)。

 ゆくゆくは自転車のレースもヒルクライム辺りからもう一度戻るのはありかもしれません。ただ平地が好きなので、クリテリウムとかにも出てみたいですね。でも、目下の目標はトライアスロンの世界選手権の出場! いまはそれしか考えられません。世界選手権の出場を果たしたあとの話は、果たしてから考えます(笑)。コロナ禍で思いがけず“充電”もできたんで、またここからコツコツ頑張っていきたいと思います!

提供:松竹芸能