TOPインタビュー「ハマるのが怖くてオフロードに手が出せない」 声優・野島裕史さんの楽しさを凌駕した自転車愛

Interview インタビュー

「ハマるのが怖くてオフロードに手が出せない」 声優・野島裕史さんの楽しさを凌駕した自転車愛

―スポーツ自転車に乗り始めたきっかけについて教えてください。

 運動したくて、自転車に乗るまではジムで走ったり筋トレしたりしていました。でも忙しくなるとジムにも行けなくなって…。そんなときに、都内を自転車で移動したらどうかと思い、総合ディスカウントストアで売っているクロスバイクっぽい自転車を買いました。それに乗ったら、10km圏内ならどこでも行けるようになりました。

 本格的なクロスバイクに乗り始めたのは、今から13年くらい前のことです。ある日、街を走っていたとき、カッコいいクロスバイクが目に飛び込んできました。クロモリフレームでタイヤも細くてカッコ良くて、もう一目惚れでした。5万円くらいするので高いと思いましたが、でも自転車は楽しいし…、と思ってクロスバイクに乗り始めました。都内23区内のスタジオなら自転車移動が向いていますし、乗っているうちに、体力もつきました。

―ロードバイクに乗り始めたきっかけは?

 アニメ作品『Over Drive』(オーバードライヴ)の加戸誉夫監督に勧められたのがきっかけです。あるとき、加戸監督に「ロードバイクの方が良いよ。うちに余っているパーツで1台できるから」と言われ、出来上がったクロモリのロードバイクに乗ってみたら、これが今まで以上に楽に進むので感動してしまって…。この素晴らしさを知ってから、今日まで自転車に乗り続けています。

―初めてロードバイクを買ったのはいつですか? 今は何台持っていますか?

 初めてロードバイクを買ったのは2009年頃です。ショップでフレームが吊るされているのを見て「こんなスタイリッシュで格好良いロードバイクがあったんだ」と。でも、納車まで待たされる間に、ピストバイクも買ったりして(笑)。その後、しばらくは買ったロードバイクに乗り続けて、そのバイクでヒルクライムレースにも挑戦しました。

 持っている台数はといえば、人にあげたり、バラしたりしていますので何とも言えませんが、自転車を始めて3年くらいの時点で、もう4台くらい集まっていましたね。

 ちなみに、今、主に乗っているのは2台です。1台はカスタムで作り上げた自分にとって“究極の街乗りロード”です。国内のチタン専門加工会社にフレームのオーダーをかけて、パーツなどにも徹底的にこだわって海外のサイトからネジを個人輸入したりして1年かけて、本体6.8kgのチタンロードを組み立てました。総額で110万円かかりました(笑)。もう1台が、レースやロングライドに乗るための自身初のカーボンバイクです。昨年から使っています。

―自転車のどこにイチバンはまったのでしょうか。楽しみはどこにありますか。

 ひとつは、自分仕様にカスタマイズできることですね。組み合わせ次第で、世界のどこにもない自転車ができます。自分が好きなパーツだけを集めた自転車ができると、愛着が半端ないです。

―自転車はどこに保管していますか。

 自宅の屋根裏に倉庫があって、そこに保管しています。広さは8畳くらいですね。工具や作業台などのメンテナンス道具も揃っています。屋根裏に自転車屋を1軒、構えているような状態です。

―声優の仕事にロードバイクは生きていますか。

 声優の仕事はスタジオを1日に何軒も回るんです。新宿、銀座、池袋といった具合にはしごすると、電車なら乗り換えが面倒だし、タクシーではお金もかかります。でも自転車なら(鉄道だと不便な)東京都心部の南北の移動も楽にできるし、クルマより早いときもあります。

 自転車の良いところは、仕事と仕事の間に運動できることです。朝起きて、家からタクシーでスタジオに行ったら、すぐには声が出ません。でも自転車で移動すれば肺や頭が活性化され、血流が上がってシャキッとします。だから朝早くから声が出ます。集中力も研ぎ澄まされるように思います。

―声優仲間や知人に自転車を普及させていると聞きます。

 趣味を強制するのが好きではないので、かける言葉も「乗ったら楽しいよ」くらいです。どんな自転車を買ったら良いか聞かれたときは、本人に意向を聞きます。そこに僕の趣味は入れ込みません。自分では乗りませんが、その人に合っていると思ったら電動アシストの「e-BIKE」だって勧めることがあります。自分には自転車のデータベースがあるので、それを生かしています。

 何よりもまず、自転車って楽しい、と思って欲しいですね。体型、体力、趣味・嗜好は人それぞれですから、普段どんな生活をしていて、どんな性格で、あとは何色が好きとか、様々な情報を得た上で「だったら、これ」とお勧めしています。

―声優の伊藤健太郎さんらと、ロードバイクチーム「VOICYCLE」(ボイシクル)を結成した経緯について教えて下さい。

 それまでは個々人が楽しんでいるだけでしたが、声優にも自転車に乗る人が増えてきて「一緒にレースに出たいね」という話になったんです。それで「せっかくだからチームにしちゃおうよ」となりました。その方が結束力が出ますし、一体感も生まれます。

 VOICYCLEは、僕が初めてつくった自転車チームです。結成したら、チームメンバーと会う回数も増えました。同業者なので、仕事の空き時間も似ています。明日、明後日、など急に時間が空いたとき「じゃあ一緒にライドに行こうよ」という話ができます。その仲間で、ツール・ド・フランスを一緒に観る会などを開催したりしています。

―今はどんな乗り方をしていますか。

 グルメライドや、友だちと一緒に乗りに行くのも好きなんですが、そんなときは楽しいことの洪水になりますね。なにせ1人で自転車通勤しているだけでも楽しいのに、楽しいことだらけになってしまいます。

―「輪行」(自転車と共に鉄道などで移動する)はしますか。

 します。ジャパンカップのトークイベントに呼ばれたときに、自宅から片道100kmくらいの道のりを自転車を漕いで行きました。宇都宮まで行ったからには餃子とビールを楽しみたいと思って、帰りは電車で帰りました。自転車で走ってみたいところがたくさんあるので、地方出張のときには自転車を持っていって、自転車でその土地をまわったりしています。

―オフロードバイクには乗りますか。

 手を出さないように我慢しています。ハマるに決まっているんです。例えば、サスペンションひとつとっても大好き。だから見ないように目をつぶっています。楽しい世界があることを十分、承知しています。でも手を出すと、お金も時間も、いくらあっても足りなくなります。山をかけ降りるダウンヒルの動画もYouTubeでよく見ています。あれ、すごい楽しそうですよね。

―自転車業界のお仕事が増えているように見えますが、この先は何を目指していますか。

 みんなに「自転車屋もやったら」と言われています(笑)。あくまで趣味なんですが、趣味にハマりすぎちゃうタイプなんです。だってレンチを回しているだけでも楽しいんですよ。自転車整備士の資格が欲しいと思い、専門学校から資料を取り寄せてしまったこともあります。内容を見ると、時間的に声優の仕事との両立が難しそうだったのでやめましたが、「夜間なら行ける」とまだ興味はありますね。最近はフレームをつなぐラグを買ったり、パイプにも興味があったりします。夢は、いつか自分で溶接したロードバイクをつくることです。