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道交法の目的と、守るべき理由

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道交法の目的と、守るべき理由

 前回までは自転車の乗り方の基本について書いてきましたが、今回からは公道の走り方のノウハウについて解説していきます。まずは道路交通法、いわゆる道交法についての基本的な考え方についてです。

道交法の目的とは?

 そもそも、道交法とは何のためにあるのでしょうか。道路を走るためのさまざまなルールが定められていますが、色々難しい部分も少なくありません。また実際の場面では、ルール同士がコンフリクトする(かち合う)場合もあり、そういった際にどう行動すべきか迷うこともあるでしょう。

 実は道交法の冒頭に、考え方のほぼ全てがシンプルに書かれています。

第一章 総則

(目的)
第一条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

 道交法とは要するに、➀安全で ➁円滑な、交通を実現するためのルールだということです。まず第一に安全を守り、次に円滑な交通という順序です。またこれらは自分だけでなく、周囲も含めたもので、皆が安全かつ円滑な交通にしましょうね、ということでもあります。

 道交法に定められたルールを読む際に、これは安全のためのルールなのか、円滑のためのルールなのか、どの部分がそれに当たるのかを考えながら読めば、ルールに対する理解も深まりやすいですよ。

自転車がまず知るべき、守るべきルールは?

 さて、基本の考え方としてはシンプルですが、実際の道交法のルールは範囲が広くさまざまで、全てを知り覚えることは難しいでしょう。正直、国家試験である自動車の運転免許を持っている人でも、全てのルールを知っている人は多くないと思います。

 そこで自転車を運転する際にまず覚えておくべきルールとして、「自転車安全利用五則」というものが近年定められました。非常にシンプルですが、これをしっかり守るだけで、ほぼ大丈夫だと言えるでしょう。

自転車安全利用五則(2022年に改訂された版)

1 車道が原則、左側を通行
 歩道は例外、歩行者を優先
2 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
3 夜間はライトを点灯
4 飲酒運転は禁止
5 ヘルメットを着用

 ただ現実は、上記の簡単なルールですら守れていない人が大半だという印象です。車道の右側を逆走している人、歩道で歩行者をかき分けて猛スピードで走る人、信号を守らない人、一時停止をしない人、いずれも毎日たくさん見かけます。

 ルールを守らない運転は、自分はもちろんのこと、周囲の人を危険にさらす行為であるということを覚えておきましょう。もしルールを守らないことで他の人に傷害や損害を与えた場合、例え自転車であっても、多額の賠償責任を負う事例が近年見られるようになっています。

なぜルールを守るべきなのか

 ルールを隅から隅まで守らなくても、事故に遭うことはないという考え方もあります。実際のところ、ルールを多少守っていなくても、余程運が悪くなければ事故に直結することは少ないでしょう。それでもルールは守るべき(少なくとも上記の自転車安全利用五則は)と筆者は考えます。理由は2つあります。

➀自分のミスを吸収してくれる

 例えば信号を守らなくても、交差する道路にクルマなどが通っていなければ事故にはなりません。理論上は自分がしっかり見てさえいれば大丈夫なのです。

 ところが、人は例外なくミスをするものです。それなりに経験を積んでそれなりの技術を持っていると自負している筆者ですら、時々判断ミスや見落としは発生します。そういった場合にルールを守る運転が習慣化していれば、事故にならず周囲がミスを吸収してくれる確率が高いのです。ルール破りは安全マージンを削る行為ですから、その状態でミスが発生すると、マージンを飛び越えて事故につながる可能性が高まるのです。

➁無法運転はクルマに嫌われる

 赤信号でも交差するクルマが途切れたら進行してしまうような、「臨機応変」な対応をしている自転車は少なからず見かけますが、周囲の交通者、特に信号を真面目に守っているクルマからは「無法者」にしか見えません。

 人って恐ろしいもので、絶対的な悪(と思い込んだ相手)に対してはとても残酷に振る舞うものなんですよ。かくして無法者の自転車は、大した理由も無くクルマから幅寄せされたり、クラクションを鳴らされたりしやすくなります。「ただ走っているだけなのに…」と思うこともありますが、実はその時点より前に大きな理由があることは少なくありません。

 逆にルールを守っていれば、クルマから嫌がらせを受けることは滅多にありません。ルールを守ることで、周囲との余計な摩擦を減らすことができるのです。特にスポーツバイクは車道走行でクルマと道路を共用することが多いので、気にしておきたいポイントです。

 スポーツバイクで走るならば、とりあえず信号と一時停止、あと左側通行はしっかり守りましょう。しつこく書いていますが、守っていない人が多過ぎます。

文: 米山一輝(よねやま・いっき)

スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。

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