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ハンドルの持ち方、正しい握り方とは

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スポーツ用自転車の乗り方、走り方<2>
ハンドルの持ち方、正しい握り方とは

 スポーツサイクルの乗り方、走り方連載の第2回は、ハンドルの握り方について解説します。ただ単に握るだけなのに正しいも間違いもあるのか?と思うかもしれませんが、実はあるのです。ハンドルの持ち方はいろいろありますが、ここではもっと根源的な「握るとは」ということについて、まずお話ししましょう。

ドロップハンドルが怖い理由

 筆者がとある初心者向けのスポーツサイクリング入門のウェブサイトを見た際、ハンドルの持ち方として示されていた写真に、堂々と間違った例が写っていました。ドロップハンドルのブラケットを握る形として、以下のように握っていたのです。

初心者向けサイトに掲載されていた例

 ダメだこりゃ!と見た瞬間に心の中でツッコミを入れましたが、よくよく自分のことを思い返してみると、筆者もロードバイク初体験の頃は、こんな感じでハンドルを握っていたかも…。前傾姿勢がやたらとキツく、油断するとハンドルから振り落とされそうで、とても怖く、手や腕が疲れたことを覚えています。

 その後もスポーツサイクル初心者の方を見ていると、結構な確率で間違ったハンドルの握り方をしていることに気付きました。そもそも「握る」という動作自体は、自転車に乗れるなら誰でも形の上はできるので、その正しさについて考えることはあまりないのでしょう。

 ですが、間違った握り方をしていると、無駄な力を使うだけでなく、危険も増します。ドロップハンドルは本来便利で安全なものですが、初心者にとっては怖いことが少なくないようです。その理由の一つに、正しい握り方ができていないことがあるのではないでしょうか。

 さて、ハンドル(ブラケット)の握り方についての答え合わせをします。以下が正しい握り方の一つになります。

正しい握り方の一つ。違いが分かるでしょうか?

 えっ? 違いがよく分からない? それでは角度を変えて見てみましょう。

横から見るとその違いが明らかになります

 これなら違いが分かりやすいのではないでしょうか。ちなみに左が間違った例、右が正しい例になります。両者はいったい何が違うのかといいますと、以下の2点になります。

① 自然に体重がハンドル上に乗っている
② 外側の指を使って握っている

「小指球」で体重を自然に受け止めよう

 間違った例では親指の付け根部分(母指球:ぼしきゅう)がハンドルに乗っていますが、この部分は肩から腕〜手首と体重が伝わっていく延長線上にありません。体重の伝わる方向はハンドルの外側へ滑り落ちており、体重を支えるために握力を使うことになります。このため、単純に「乗せている」状態に比べて余計な力が必要になります。

体重を受けている部分の違い
間違った例(左)では体重のかかっていく方向(赤矢印)と、ハンドルで受けているポイント(青点)がずれています

 正しい例では体重を小指の付け根側の小指球(しょうしきゅう)で受けており、体重が掛かる方向とハンドル上の支持位置が一致しているため、握力で体重を支える必要がありません。ハンドルを握る力は手の位置が動かない程度でよく、路面状況や走行ペースが安定していれば指を添えたり引っ掛けたりするだけで十分になります。無駄な力を使わずに済むだけでなく、手元を完全に固定しないことで手首を柔らかく使えるため、路面のショックを吸収しやすくなります。

 路面の状況や力の入れ方によって、ハンドルはさまざまな形で握ることになりますが、大原則として押さえておきたいポイントは「体重は指でなく掌で受ける」ということです。ほとんどの場合、体重が掛かる方向に小指球があるので、小指球で受けることになります。

「握るための指」で握ろう

 さてもう一点、②の部分ですが、よくない例では手の内側に位置する母指球で乗っているため、手の内側にある親指と人差し指、中指を使ってハンドルを握り込むことになります。実は手の5本の指には大まかな役割(得意分野)があり、親指〜中指といった内側の指は「つまむための指」といわれています。鉛筆や箸を持って細かい作業をするのに適した指、ということです。

 これに対して「握る指」は外側の中指〜小指。こちらは大きな力を出しやすくなっていて、楽に握ることができます(中指はどちらにも入りますが、主としては薬指、小指になるでしょう)。このため、しっかり握って支持する場合、握る指に近い小指球を使った方がいいことになります。

 他のスポーツ、たとえば野球のバットやゴルフのクラブ、剣道の竹刀など、「小指で握れ」と言われたことはありませんか? 棒モノを使うスポーツではほぼ共通しているはずです。自転車のハンドルも棒を握っているわけですから、同じことが言えるというわけです。

 これら基本を押さえてしまえば、あとは力の入りやすい、あるいは楽をしやすい握り方をいろいろ試してみましょう。ちなみに、指だけで握り込むのではなく、指を引っ掛けて絞るようにすると、あまり握力を使わなくても手をしっかりハンドルに固定できます。ドロップハンドルなど複雑な形のハンドルは、さまざまなハンドルの持ち方ができるので、バリエーションを持っておくと長距離・長時間に対応しやすいですよ。

 ちなみに冒頭の「間違った例」も、時と場合によっては「あり」な握り方になります。ただ、あくまで応用編なので、まずは基本の握り方をマスターしてくださいね。

文: 米山一輝(よねやま・いっき)

スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。

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