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ヒルクライムで大切なロスのないペダリング

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ロードバイクをより楽しむためのヒルクライム講座<7>
ヒルクライムで大切なロスのないペダリング

 何度もヒルクライムにチャレンジして体力がつくと、少し重いギヤを踏めたり体の変化を感じ取れるようになります。特にヒルクライム中に頑張ってペダルを回すと、前腿がパンパンになるのを感じませんか? 長いヒルクライムで前腿がパンパンになるほど頑張ってしまうと、途中でバイクを降りて休みながら走ることも考えられます。その原因はもしかするとペダリングにあるかもしれません。そこで今回は無駄(ロス)のないスムーズなペダリングについて紹介します。(文・菅洋介 / 写真・石川海璃)

ヒルクライムで役立つスムーズなペダリングを紹介します

ぺダリングがスムーズになるポイントは?

 ペダリングがスムーズになるポイントは2つあります。ペダルの回転を制御しないこぎ方と継続して回せるギヤ選びです。この2つについてそれぞれ解説していきます。

 まずはペダルの回転を制御しないこぎ方についてです。ペダルをこぐとき、ついつい足先で綺麗な円を描こうと意識してしまいますが、常に真円を描いているのはペダルの軸だということを覚えておきましょう。足首を器用に動かして足先で円を描いているつもりでも、ペダルが描く円を筋肉で制御しています。

 また足先で円を描こうと意識しすぎると、足先の動きはふくらはぎや膝まわりの筋肉を集中的に消耗するため、“足つり”を起こしてしまったり膝が痛くなったりと、体が故障する可能性があります。

 ペダルの回転を制御しない方法は、ペダリングの意識を変えることです。試しにこれまでのペダルを踏むという感覚から離れて、くるぶしで円を描くようにこいでみましょう。足首から先の力が抜け、足先で踏むという感覚から腿の上下でペダリングしている感覚になるはずです。足先の無駄な力が抜ける分ペダリングもスムーズになります。重いギヤでこいでいるとペダリングの惰性を超える重いギヤを選ばなくなるため、ギヤ選びの問題も解決します。

くるぶしで円を描くようにペダルをこいでみましょう

 このペダリングを意識すれば、まずは平坦路で走るときのフォームが徐々に変わってくるでしょう。それは足先ペダリングは背中が丸くなっていたのに対し、くるぶしを意識したペダリングでは背中が伸びてきて、お尻や裏腿を活用できるからです。長距離を走る上で必要なスキルです。

足の裏全体でペダルを踏もう

 次にビンディングシューズとビンディングペダルを使っていると想定して、上りでギヤを踏まないといけない場面でのペダリング改善のポイントについて解説します。

 注目すべきはビンディングシューズのソール(靴底)をペダルに置き換えて考えることです。上りはソールをペダルと考えて足の裏全体で回すとペダリングが変わります。

 ここで一つの例として階段を上るときをイメージしてみましょう。階段を駆け上がるときの足は踵が上がり、拇指球中心に地面を捉えます。一方、1段飛ばしで階段をノッシノッシと上るときは足裏全体で地面を捉えます。これを自転車に乗っている場面に置き換えると、前者がピッチを上げた加速のフォーム、後者が重い体を持ち上げるときに腰を入れて踏み上げるフォームだと言えます。

 平地はペダルの回転数を上げて加速をすれば必然的に拇指球中心に踵はあがり、重いギヤで走れば足が踏ん張るので踵が下がってきます。上りでは上述のように、ビンディングシューズの硬いソール全体をペダルと捉え、足裏全体で踏むという意識をすれば、大腿直筋や臀筋群、ハムストリングスなど大きな筋肉を使えるようになります。このペダリング意識を習得するとヒルクライムの走りは大きく進化するでしょう。

ソール全体をペダルと捉え、足裏全体で踏むイメージだと大きな筋肉を上手に使えます

 ちなみに足裏全体で踏めるように意識できると、足先で回すのに丁度良かったサドルの高さが少し高く感じます。その場合は調整して適切なポジションにしてください。

 第6回目で紹介した勾配ごとの最適な回転数の基準を参考に、ソール全体でペダルを踏み、フィットしたサドルの高さで実際に走ってみましょう。この2点を意識してペダリングすると、クランクの6時付近(下死点)で足先が伸びないので、回転数を軸にギヤを選んでも前腿に限界を感じることはないでしょう。ペダリングスキルも大きく向上し、長距離のヒルクライムを楽しめるようになります。

撮影協力:株式会社シマノ

管洋介(SUGA YOSUKE)
AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードしていく。