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レースイベントでの走行の注意点 その2

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レースイベントでの走行の注意点 その2

 前回に続き、ロードバイクでレースイベントに出る際のポイントを紹介していきます。今回はボトルや補給食などの取り出し方、集団内での車間調整、接触シーンを想定した練習の仕方、コーナーリングのテクニックについて触れていきます。

レースイベントに参加するには身につけておくべきスキルがある

ボトルの取り方 補給食の取り方

 エンデュランス競技であるロードレースやヒルクライム、エンデューロで必ず必要となるのが水分補給と補給食の摂取です。タイミングとしては見通しの良いストレートや安全を確保できる下り区間で補給をとることがほとんどです。しかし、走行中に片手を放してボトルケージやポケットに手を回すことを難しいと感じるライダーも多いと思います。

 そこで紹介したいのがトップチューブをヒザで挟むテクニックです。まずは走行中にクランクを水平に両ヒザでトップチューブを挟んでみましょう。そしてその状態をキープしたまま片手をスッと放すとどうでしょう。ハンドルを持った片手へ荷重が加わらないのが体感できます。前をしっかり向きながら片手を背中のポケットへ回すと簡単に補給食を取り出せます。ほとんどの場合、補給食は口元で袋を開けて食べるので、このテクニックで補給が容易に行えます。

補給食を取り出す際はトップチューブを膝で挟むのがポイント

 次にボトルをとるときは、手を伸ばしやすいように少し左右のヒザをずらしてトップチューブを挟んでみましょう。片方の足がヒザ下、もう片方が内腿辺りで当てることでバランスを保てます。ハンドルを持ったヒジをリラックスさせて片手でボトルへ手を伸ばすと簡単に取り出せます。

ボトルを逆手に掴むのがポイント(良い例)

 このとき、ボトルを逆手に掴むこともポイントです。こうすることで口元にボトルを運んだときにヒジが上がらず、顔を上げずに口元にボトルを這わせて飲むようになります。ヒジが上がると顔が上がってしまい前方不注意となってしまうためこの取り方をお勧めします。

顔が天を仰ぐような状態になると危ない(ダメな例)

怖いと感じたら、なるべくペダリングをとめないで車間調整ブレーキング

 レースイベントでは前後左右にライダーがいるため、接触の危険と隣り合わせです。車間が詰まって「怖い」と感じてしまうと身体全体が硬直し、ハンドルを掴んでしまうライダーも多いです。この動きはブレた方向へバイクが引き込まれてしまうので、落車の危険を高めてしまいます。

 前回、グループ走行のレクチャーで前走者と車間が詰まったときに足を止めずにペダリングしながら当て利きブレーキを行うというテクニックを紹介しました。ペダリングを続けることで車体は立ち、車間調整のブレーキングを行うことで危険な状況を回避できるのです。そして今回のように前走車の車輪と接触してしまったり、身体同士がぶつかったりしてしまったときもペダリングを続けることが重要で、車体の直進性を保つことでぶつかった側に倒れ込まなくなるのです。

接触してもペダリングを続けることが重要

自転車とフォローできる人で肩をぶつけ合う練習をする

 集団で走るレースイベントに参加する前に、仲間と接触シーンを想定した練習を行ってみましょう。いきなり自転車同士で行うのはリスクが高いので、一緒に並走してランニングしてもらいながら肩を当て合う練習からはじめると良いでしょう。

まずはランニングで並走してもらいながら、肩を当て合う練習をしよう

 すると接触したシーンでお互いが同じスピードで当たり合うことで車体が安定することを感じるはずです。自転車側がペダリングを止めずに走ることで徐々にバイクが立ち上がり、ほぼ接触前の状態に体勢が戻ります。接触状態から離れるときはハンドルを切らずに当たっている側の膝をトップチューブに当ててあげることでカウンターバランスで車体がスッと立て直せます。

自転車同士で行うぶつかり合い

 慣れてきたらバイク同士で行ってみましょう。このとき「2輪が4輪になるイメージ」を持つことがポイントです。二人の身体の接点は車のシャーシとイメージしてみましょう。接触するタイミングは、低速であってもお互い直進性を保てるスピードです。

安全かつ適切な場所を探して自転車同士でぶつかり合う練習もしておきたい

 そしてヒジを軽く外に曲げて、身を寄せ合って肩同士でぶつかると安定感が増します。これはハンドル同士がぶつかってしまうと転倒に直結するからです。レース中の接触落車の多くは、お互いが避けようと身を切ってしまうことでハンドル同士がぶつかって起きるケースがほとんどです。ペダリングを続け、車体が立ち、直進性を感じたところで接触している側の膝をトップチューブに当てて離れます。

コーナーリングのテクニック

 コーナーリングフォームは腰を少し引き、胸を下げてヒジを軽く曲げ、ハンドルへ荷重が乗らないことが基本です。この状態でコーナー内側へ顔を向けると上体が旋回し、「身体で曲がる」ことができます。しかし、集団内の位置によってコーナーに入る角度も大きく変わります。インベタ(コーナーの最も内側で走る)、中間ラインを保つ、アウトラインをキープする、アウト・イン・アウト(コーナー外側から侵入した後で、コーナー内側に入り、最後はコーナー外側に抜けていく)で走るといったケースがあり、それぞれにコーナーリングフォームが存在します。

・リーンイン

 インベタのラインをとったり、コーナーの外側に膨れたりする場面で、走るラインを保つためバイクを立てて走るテクニックです。コーナー内側の膝をトップチューブに当てることで、カウンターバランスによって頭はコーナー内側に入ります。頭を軸にバイクの車輪で弧を描いて曲がります。バイクに足が触れることでバランスを保ったままラインをキープできるのがポイントです。

コーナーでインベタ、外側に膨れるといった状況で走行ラインを保つためにバイクを立てて走るリーンイン
・リーンアウト

 コーナー内側の膝を立ててコーナーへ向けて突き出し、膝の先でコーナーラインをなぞることで切り込んでいけるテクニックです。カウンターバランスでバイクはコーナー内側へと倒れ込み、頭はコーナー外側に移り、重心バランスを保ちます。このとき顔が地面に対して垂直に保つイメージを持つと安定感が増します。

 ロードレースでは左右にライダーがいない先頭付近のライダーがスピードを殺さずにコーナーへ侵入する「アウト・イン・アウト」でコーナーへ切り込んで入る際に頻繁に使うテクニックです。

スピードを殺さずにコーナーに侵入するリーンアウト
・リーンウィズ

 クランクを水平にペダルに対して両カカトを下げて両脚荷重のフォームをとることで低重心を作り出し、コーナーリングで倒れ込んだ車体と身体の左右バランスを均等に保つことで安定して曲がれるテクニックです。コーナー中にラインが急に変わる場面などに左右に身をこなして立ち回ることができるため、左右にライダーがいる状態でのコーナーへの侵入には非常に有効なコーナーリングフォームです。

両脚荷重のフォームをとることで低重心を作り出し、コーナーリングで倒れ込んだ車体と身体の左右バランスを均等に保つことで安定して曲がれるリーンウィズ
管洋介
管洋介(SUGA YOSUKE)
AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードして行く。