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ケーブル劣化とディレーラー調整

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ケーブル劣化とディレーラー調整

 自転車…というか、あらゆる機械・器具は使えば劣化します。人間を乗せて屋外を走り回るわけですから、そこは仕方ありません。以前に「チェーンとタイヤの劣化」について触れた回がありましたが、経年劣化はそれ以外にもありまして、それが顕著に現れるのが「ケーブル類」です。

 最近は電動変速とか油圧ディスクブレーキのロードバイクも出てきましたが、伝統的なタイプのロードバイクの場合

・変速用のシフターケーブル(前後で2本)
・ブレーキ用のブレーキケーブル(前後で2本)

と、合計4本のワイヤーケーブルが備わっています。

 さらに、それぞれのケーブルはインナーケーブルとアウターケーブルがあります。ストローのようになったアウターの中をインナーが通っている…と思っていただければOK。インナーケーブルは内側にあるから劣化しにくいのかな?と思うかもしれませんが、残念、どちらもしっかりダメになっていきます。よって、適度な調整と定期的な交換が必要なのです。

4本のケーブルが見えますね

アウターとインナー、どっちが早くダメになる?

 筆者がロードバイクに乗りはじめの頃、なんとなく「内側のインナーケーブルのほうが外気に触れにくいぶん、劣化が遅いだろう」と考えていました。が、結果はその逆で、自分はアウター1回の交換に対してインナーを2回交換するイメージです。乗り方や使っている製品にも左右されるので断言はできませんが、インナーケーブルのほうをレバーで引いてブレーキや前後のディレーラーが動くわけですので、より大きな力がかかっているから…なのだと理解しています。

 インナーケーブルを包んでいるアウターには直接力はかかりにくいものの、多少はかかりますし、1年も過ぎれば表面がひび割れてきたりします。ブレーキの利きが落ちてきたな、あるいは変速のキレが悪くなってきたな…と思ったら、ケーブルの伸び・劣化を疑ってください。

 適切にメンテナンスしていれば、走行中にブチッと切れてしまうことはまずありませんが、もし切れてしまえば、ショップに駆け込むしかありません。走行中のトラブルで近くにショップが無かったら…と考えると恐ろしいですね。普段からしっかりチェックとメンテナンスをして、緊急事態が起こらないようにしておきましょう。

ケーブル交換の頻度、目安、タイミングは?

 チェーン同様、見た目の変化がわかりにくいパーツなので、目視で判断するのは初心者の方にはオススメしません。まず目につくアウターケーブルで言いますと、曲がった部分にひび割れが見えてきたら要注意…でしょうか。テンションがかかりやすい場所なので、まずここの劣化で判断しましょう。

 次にインナーケーブルですが、内側にあるので見て判断ができません。そこで、チェックしたいのが「先端部分」。前後ブレーキ本体&前後ディレーラー本体から、余ったケーブルが数センチ飛び出していますよね?これを見てみましょう。むき出しの劣化具合で判断するという具合です。ささくれていたり、ほつれていないか?錆びて変色していないか?ここがシュッとしてピカピカであればまず問題はないでしょう。

 ブレーキの場合、レバーを引いたときの感触も気にしておきましょう。ケーブルが劣化してくると引きが重くなってきます。また、ブレーキが掛かった状態で握り込んだときに、初期状態に比べてグニャッとした感覚が出たら要注意です。もしかしたらどこかでインナーケーブルが切れかけているかもしれません。

 ただ、初心者の方がこれを定期的にするのは、ちょっと現実的じゃないというか、忘れてしまいそうになりますよね。それに、4本のケーブルがまったく同じタイミングで足並み揃えて劣化してくれるわけでもないので、厳密には交換時期は人それぞれ。それを目視を頼りに判断するのは荷が重いものです。

別々に交換するのではなく、一気に全取っ替えしてしまうのがコツ

 そこで、確実&簡単な方法をオススメしましょう。ズバリ、

・(たくさん乗る人=毎週末ガンガン走る。月間走行距離が数百km)1年で全部総取り替え
・(たまにしか乗らない人=月に数回のサイクリング&短距離の通勤、通学。月間走行距離100kmかそこら)2年で全部総取り替え

 これです。

 ブレーキもシフターも合わせて4本やってしまうもよいですし、「さすがにブレーキとシフターは分けたい」ならそれでもいいでしょう。ただ、インナーとアウターは同時交換が確実です。

 なぜなら、ブレーキのインナーワイヤーをまず交換して、その半年後にブレーキのアウターケーブルを交換して、しばらくしたと思ったらシフターのインナーケーブルを取り替え、そうこうしているうちにシフターのアウターケーブル…って想像しただけで混乱してきませんか? そのうちに時期と順番を忘れてしまうでしょう。あと、別々にやっていると工賃がその都度かかりますし、ロードバイクなどドロップハンドルの場合はバーテープを剥がすのもコスト増につながります。

 交換した時期は忘れないよう、専用のノートを用意しておくのもいいですし、今ならクラウド上のメモ等に残すのもいいでしょう。筆者は何のパーツ(タイヤ、チェーン、ケーブル、ブレーキシュー)をいつ交換したかメモしています。ときどき眺めて「そろそろ交換時期だなー」と把握できて便利です。

筆者のメモです

 あと、走行距離も書いています。「先月は600キロ走ったのに今月は400キロか…あまり乗れてないな。よし、今週ロングに行こう」と、モチベーションの元にもなります(笑)。

交換ではなく、調整で済むこともある

 変速しにくくなってきた、ブレーキの利きが悪くなってきた…からといって、即交換しなくてはいけないわけではありません。というか、たいていはケーブル調整でバッチリ元に戻ります。

 アウターもインナーも、ケーブルは引っ張ればそのうち伸びてくる…ものです。物理の法則です。なので、利きが悪い=伸びてきた(緩んだ)と思ってよいでしょう。そこで、ネジを巻いて緩みをとり、テンションを加えていくわけです。リアディレーラーを例にとってお話しますと、ケーブルがリアディレーラー本体につながる部分にネジがありますね。これを回して調整します。ロードバイクの後ろから見て、「ネジを反時計回り」に回せばテンションを上げる(=緩みをなくす)ことができます。一般的なワイヤー引きのサイクルパーツの場合、同様の調節ネジが前後ブレーキ本体にも付いています。

反時計回り(写真でいうと左方向)へ回すとテンションが上ります

 変速機の場合、調節ネジを回すときに気をつけたいのが、一気にぐるぐると回さない…ことでして、4分の1回すだけでOK。4分の1回したら変速してみて、調子が復活しているかどうか確かめる。まだ緩ければもう4分の1回させて繰り返します。

 この微調整でちょっとした緩みなら解消します。それでもダメなら、かなり伸びている可能性があります。そうなったらいったんケーブルを開放して、引っ張って張り直す必要があるかもしれません。この場合はショップのプロにお任せするのが得策でしょう。

 とくにブレーキケーブルは自転車乗りにとって命綱。どんなにスピードが出せても、確実・安全に止まれなければ意味がありません。ケーブル類は比較的安価ですので、迷ったらさっさと交換!くらいの気持ちでいるのが良いです。

 ということで、

  • ■目視で劣化がないか確かめる
  • ■一気に全部取り替えると決めておく
  • ■交換の前に調整で済まないか試してみる
  • ■迷ったら、ケチらず交換する

 と心得てください。

写真・文/中山順司

中山順司
中山 順司(なかやま・じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。ブログ「サイクルガジェット」を運営。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ローディの方はもちろん、これからロードバイクを始めようかとお考えの方が、「こんなコンテンツを読みたかった!」とヒザを打って喜ぶ記事をつくります。