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100km走るための装備の知識

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ロードバイク単独100km走破術<2>
100km走るための装備の知識

 100kmを単独で走るためには準備が大切というのは前回の記事の通りです。エネルギー切れを防ぐための補給食の準備や万一のトラブルへの対策、寒暖差への対応など、考えるべき準備はいろいろあります。とはいえ、あれこれ考えすぎて荷物が増えすぎてしまうのも考えもの。そこで今回は100kmライドで最低限持って行きたいものや服装などについてお話しします。

準備の基本は補給、トラブル、天候への対策

 体力に自信のない方が無理のないペースで100km走ろうとするなら、休憩時間も含めて6~7時間程度見ておいた方がいいでしょう。長時間走るとなると、エネルギー切れにならないように補給しなければいけません。また、走行中にトラブルに見舞われない可能性がゼロではないので、その対策も必要です。さらに1日屋外で走るとなると、気温差や紫外線に対応する必要もあります。

 このように、100km走るための準備は、大きく3つに分かれます。補給対策、トラブル対策、天候への対策です。

●補給対策 →ボトル、小銭、スマホ(コンビニなどでスマホ決済可能な場合)、補給食

 100km走るとなると、エネルギーも消費しますし、汗によって水分も失われます。なので、定期的に補給しながら走る必要があります。水分やエネルギーは、のどが渇いたりお腹が空く前にこまめに少量ずつとるのが効果的で、水分は5~10分程度に一口、補給食は1時間程度に1回とるとよいでしょう。

ボトルは2本(一本は水、もう一本はスポーツドリンク)を用意しよう

 ドリンクはボトルに入れます。できればダウンチューブとシートチューブにボトルを装着するダブルボトル態勢にし、1本は水分とエネルギー補給用のスポーツドリンク、もう1本は水分補給とかけ水用の水を入れるとベストです。ちなみにかけ水とは、夏場などに身体がオーバーヒートするのを防ぐために頭や首、股の付け根などに水をかけて気化熱によってクールダウンすることです。

 補給食は1時間に1回程度コンビニなどで休憩するといいでしょう。ランチは長めに休憩を取ってゆっくり食事をしてもいいですが、100km完走が目的ならあまり長時間の休憩は取らないほうがベター。長く休むと再出発の時につらいからです。

 また、適当なところにコンビニがないケースや、スマホ決済に対応していないお店しかない場合もあり得ます。日ごろからスマホ決済を利用している人は、小銭も用意しましょう。さらにお店がないところでエネルギー切れになりそうになった場合に備え、ジェルなどの補給食を持参すると安心です。

ジェルも用意しておくと便利です

 走行中にどのぐらい補給する必要があるかは、消費エネルギーによって異なるので一概には言えません。ただし、大まかな消費エネルギーは、METsという指標を活用すると簡単に求められます。METsはさまざまな運動時に安静時の何倍カロリーを消費するかを表す指標で、自転車では走行ペースやシチュエーション、地形などによって細かくMETsが設定されています。METsを使って簡易的な消費カロリーを求める方法は次の通りです。

簡易的な消費カロリー=体重(kg)×時間(h)×METs

 例えば、自転車で時速20km程度で走った場合は8METsなので、あとは体重と運動の継続時間を当てはめれば大まかな消費エネルギーが求められます。

 ちなみに体重65kgの場合、時速20kmで5時間サイクリングした時のエネルギー消費量は2600kcalです。実際には出発前に食事を取るでしょうから、その分を差し引いて補給計画を立てるといいでしょう。

●トラブル対策 →タイヤチューブ、パンク修理キット、タイヤレバー、タイヤブートやタイヤの切れ端、携帯ポンプ、携帯工具、IDカードなど

 サイクリング中のトラブルで一番多いのはパンクです。事前にタイヤをチェックしたり空気圧をしっかり管理することである程度防げますが、それでもパンクが発生することはあります。単独走行中にパンクしたら自分で対応しなければならないので、パンク修理の方法は必ずマスターしておきましょう。

 パンク対策として必要なのは予備のチューブ2本、タイヤレバー、パンク修理キット、携帯ポンプなどです。貫通パンクやリム打ちパンクの場合、基本的にチューブを交換して修理しますが、予備のチューブを使い切ってしまった場合に備えてパンク修理キットも持参しておきましょう。パンク修理キットは、ゴムのりを使わないパッチタイプのものだと簡単に使えます。

サドルバッグにはジップロックに包んだ予備チューブと携帯工具、タイヤレバーを入れておきます。ポンプも忘れずに

 不運にもタイヤの側面に切れ目が入ってパンクした場合、普通にチューブを交換するだけではタイヤの切れ目からチューブが飛び出してしまい、最悪の場合新しいチューブを破損する可能性もあります。そのようなケースで役に立つのがタイヤブートなどと呼ばれるタイヤの裏から貼り付けるパッチタイプの製品です。タイヤブートの代わりに、ビードをあらかじめ切り落として3cm四方ぐらいにカットした古タイヤを使うのもありです。

タイヤの側面に切れ目が入ってパンクした場合はタイヤブートを使用します

 パンク以外のトラブルに関しては、日ごろからメンテナンスを行うことで大部分は防ぐことができます。特に舗装路をきちんとメンテナンスされたロードバイクで走る場合、チェーンが切れるなどの深刻なトラブルはほぼ起きないと言っていいでしょう。

 とはいえ、携帯工具ぐらいは持っておいた方がいいでしょう。走行中にサドルの高さを変えたり、クリートの位置を調整したりできるほか、走行中の振動でボルトが緩んでしまったときに締め直すのに使えます。もしチェーンが切れた場合にも備えるなら、チェーンカッターつきの携帯工具とチェーンをつなぐためのミッシングリンクを持って行くことを検討してもいいでしょう。その場合も自分でチェーンを切ってつなげられるように練習しておくことが大事です。

 そしてもうひとつ大切なものがIDカードです。もし単独で走っていて事故に遭ってしまった場合、または調子が悪くなってしまったとき、緊急連絡先が書かれたIDカードがあれば安心です。IDカードはサイクリスト向けのものがシマノのイベントホームページなどでダウンロードできます。健康保険証や運転免許証のコピーを携行するのもオススメです。

●天候への対策 →アームウォーマー、レッグウォーマー、ウインドブレーカーまたはベスト、日焼け止め、レインジャケットなど

 天候への対策としては、寒暖差への対応や紫外線対策などが挙げられます。

 朝晩の涼しい時間帯に対応するためにアームウォーマーやレッグウォーマーがあると便利です。さらにウインドブレーカーやベストがあれば万全ですが、荷物が増えるので暖かい時期はなくても大丈夫でしょう。

アームウォーマーやレッグウォーマーも用意。すぐに取り出せる背面ポケットに忍ばせます

 紫外線対策も重要です。サイクリングは屋外で長時間行うスポーツなので、紫外線を長時間浴び続けることになります。紫外線を浴びると日焼けをしますが、日焼けによって体力を消耗します。日焼けは美容面だけでなく、疲労軽減の観点からも避けた方が賢明です。

 紫外線対策としては、UVカット素材のウェアを使うことのほか、日焼け止めを塗ることも有効です。日焼け止めは汗をかいて落ちてしまうこともあるので、休憩中にこまめに塗り直せるように小型のものを携行するといいでしょう。

 雨が降りそうなときは、レインジャケットを持って行くのもあり。雨具として活用するのはもちろん、ちょっと肌寒いときにはウインドブレーカーの代わりになります。ただし、レインジャケットはウインドブレーカーと比べてやや生地が厚いので、どうしても荷物がかさばってしまいがち。雨が予想される場合はあえて走らない、という選択肢もありです。

大前提としてライトとフラッシャー、ベルは必ず付ける

 以上、大まかに必要なものを記しましたが、バイクの必需品についても簡単に触れておきます。まずは道交法で装着が義務づけられているものから。

 ひとつはライト(前照灯)。早朝の薄暗い時間帯から走り出す際や、日暮れ前の薄暮時以降に走る際は、必ず点灯しましょう(点滅はダメ)。安全走行のため、日中はライトを点滅させる「デイフラッシュ」が推奨されています。充電タイプのLEDライトがコンパクトで明るいのでおすすめ。明るさは400ルーメン程度あると安心です。

前照灯とベルは装着必須です

 次にベル。スポーツバイクのスマートなルックスを損なわない小型のベルやデザイン性に優れたベルもあるので、お気に入りのものを付けておきましょう。

 最後にテールライトや赤い反射材(フラッシャー)。ライトとベルに加え、これらのいずれかを装着することが道交法で義務づけられています。こちらも安全走行のために日中はテールライトを点滅させる「デイフラッシュ」が推奨されています。

テールライトも装着必須です

 次に道交法上は必要ではないけれど、100km走るのに欠かせないものを紹介しましょう。

 ひとつめはボトルケージ。自転車にボトルを取り付けるためのアイテムです。ダウンチューブとシートチューブのボトルケージ台座に付け、2本のボトルを携行できるダブルボトル態勢を整えるのがおすすめです。ボトルは、コンビニなどで定期的に補給できるのであれば500mlサイズのものが2本あればOKでしょう。もし不安ならより大容量な750mlサイズのものを使うという選択肢もありますが、いっぱいに満たすとその分重くなりますし、ドリンクを飲みきる前にぬるくなってしまう可能性もあります。保冷ボトルを使えば中の飲み物の冷たさがキープできます。

ダブルボトル態勢が便利です

 もうひとつはサドルバッグ。サドルの下に付ける小型のバッグです。タイヤチューブやパンク修理キット、タイヤレバー、工具などはここに入れて携行するといいでしょう。容量は0.7L程度あれば十分でしょう。

サドルバッグは0.7リットル程度あれば足ります

 次回は今回紹介した装備のまとめです。

浅野真則
浅野真則(あさの・まさのり)
自転車ライター。JBCFエリートクラスに参戦し、ロードレース、ヒルクライム、タイムトライアルなど、レース中心に自転車を楽しんでいる。海外のグランフォンド参戦経験もあり、ロングライドも好き。出身地である三重県や東海地方の魅力をサイクリスト目線で伝えることを今後のライフワークにしたいと考えており、ツーリングの実走レポートの仕事にも力を入れている