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Cycling Manner 自転車マナー

道路を走るコツ
<8>すり抜け時の注意点

 渋滞にあえぐクルマの横をすり抜けてスイスイと走る。自転車の特権を存分に発揮できる瞬間ですが、油断してはいけません。渋滞している車列を追い抜くときも、多くの危険が待ち受けているんです。

 例えば、タクシーのドア開け。客の「急いでるからここで降ります!」に応えてドアを急に開けるタクシーはかなり多いです。また、歩行者が歩道から急に出てくる可能性だってあります。クルマの間を縫って走るオートバイが目の前に飛び出してくることもあるでしょう。クルマの横をすり抜けるときは、必ずスピードを落として周囲を確認し、細心の注意を払いながら走ること。

 前方に交差点。信号は赤。自転車は交差点の停止線まで行き、そこで止まります。そんなときに気を付けなければいけないのが、歩行者の飛び出しです。交差点の手前から車道に出て、クルマの間を縫うようにして交差点をショートカットしようとする歩行者がいるからです。自転車はオートバイと違って音がしないので、歩行者が気付きにくいんですね。交差点に近づいたら、「路駐車両の影や歩道から歩行者が飛び出してくるかもしれない」と常に身構えておきましょう。

 また対向車線から、渋滞で止まっている車列の間をすり抜けて、道路左側の店舗などにクルマが右折してくる場合があります。渋滞時は<7>でお話しした「サンキュー事故」が、交差点ではない場所で起こる可能性があるのです。

 ここまでの例は基本的に「渋滞で車列が止まっているとき」に起こりやすいパターンです。停止している車列の横をすり抜ける場合は、これらの危険パターンを頭に入れ、十分に速度を落とし、死角の有無に気を配りながら走りましょう。


そもそも、すり抜け無用の場合も

 交通ルールではなくマナー的な問題ですが、車列を追い抜いて前に出ない方がいいケースがあります。

 信号が連続する道路では、赤信号でクルマを追い抜く→その後クルマに追い越される→次の信号でまたクルマを追い抜く…の繰り返しになることも多く、ドライバーをイライラさせる原因になります。クルマが自転車を追い越すという行為は、ドライバーにとって神経を使う(ストレスの高い)ものだと覚えておきましょう。また大型車両は、自転車をなかなか追い越せず、渋滞の原因になってしまうことがあります。

 公道を気持ちよく安全に走るには、一度自分を追い越したクルマは赤信号で追いついても抜かさない、渋滞ではない単なる交差点の信号待ちではクルマを抜いて前に出ない、などの心配りが必要です。「そもそも、すり抜けはしない方が良い」という場面も多いです。

 「自分は安全か」だけではなく、「どうすればクルマと自転車がお互いに気持ちよく走ることができるか」を考えることが大切ですよ。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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